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北の大地から日本企業をDX Salesforceで急成長「キットアライブ」 札証新規上場、貫いた北海道愛

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コロナ禍の逆風が続く2022年の北海道経済界に、明るいニュースを届けてくれた企業があります。札証アンビシャスに今秋上場したITベンチャー「キットアライブ」(札幌市北区)です。

世界の約15万社以上が利用しているビジネスクラウド「Salesforce」の導入支援事業で飛躍を遂げ、年率2桁成長を続けています。札証への新規上場は約3年ぶりで、道内外で大きく報じられました。

創業者である嘉屋雄大社長がSalesforceに出会ったのは、時を遡ること15年前。今や世界を席巻する多種多様なクラウドサービスが、世の中に生まれたばかりの頃でした。システムエンジニアだった前職時代、新規事業の開発を模索するなかで偶然その存在を知り、優れた機能に惚れこんだと言います。

「北海道から日本のクラウドビジネスを支えたい」という嘉屋社長。ハローワークで職探しをしたという大学時代の苦労、Salesforceに出会った時の衝撃、起業独立から札証上場に至るまでの歩みをうかがいました。

  • ハローワークで見つけた「天職」
  • 「札幌に会社を作らねば」芽生えた志
  • 偶然見つけたSalesforce 惚れ込んだ
  • 顧客とともに成長するプロダクト
  • 札証上場で知名度UP 人材採用を加速
  • 残業時間で技術学んで 若手が喜ぶ独自制度
  • 危機感が企業を変える DXへアクションを

キットアライブ社ホームページより

ハローワークで見つけた「天職」

ーーさまざまなインタビューで北海道が大好き、と仰られています。まず、北海道との関わりを聞かせてくださいますか。

「私自身は大阪府箕面市の生まれで、両親は北海道生まれです。父親が転勤族だったのですが、小学1年のときに札幌市に引っ越してきました。それ以来、ずっと札幌住まいです」

ーーほぼ道産子ですね(笑)。札幌東高校から北海道大学理学部に進学され、そのまま札幌で就職されています。

「はい。本当は生物科学の分野で大学院に進学する予定だったのですが、大学4年の冬に父親が体調を崩して仕事を辞めてしまったんです。急きょお金を稼がなければならなくなったのですが、就職活動もしておらず、急ぎ公務員試験の勉強をしたものの落ちてしまいました。大学を卒業してから暫くは就職先が見つからない状況で、若年層向けのハローワークに行ったんです。そこで前職のIT企業ウイン・コンサル(札幌市)を見つけました

ーー北大生がハローワークで就職活動をする…。大変な思いをされたんですね。

「確か求人票をアイウエオ順にあ、い、う…と探していて、ウイン・コンサル社を見つけた記憶があります(笑)。当初は翌年春の入社予定だったのですが、家庭の事情で少しでも早くお金を稼ぎたいと会社側に説明して、入社時期を12月に前倒しして貰いました」

嘉屋雄大社長

「札幌に会社を作らねば」芽生えた志

ーーその当時、札幌に残って就職する北大生って結構いらっしゃったのでしょうか。

「全然いないです。友達もみんな東京に行ってしまって。キットアライブを起業する原体験になったのもその時でした。僕はもともと、東京の会社で何かをしたいという気持ちがあまりなくて、北海道に残りたいという気持ちのほうが強かった。自分のような学生の受け皿をつくるためにも、『札幌にいい会社を作るしかない』と思いました

ーーなぜ北海道がいいと思われたのでしょうか。

「外に出て楽しむことが好きなんです。冬は雪が降ってスキーが出来て、夏の自然もきれいで、温泉だって沢山ある。子供を育てる土地としても最適です。こんな素晴らしい土地は北海道以外にあるのだろうかと感じていますし、学生時代も今もその思いは変わりません」

偶然見つけたSalesforce 惚れ込んだ

ーー大学時代には生物科学を専攻されながら、就職したのはIT業界。ウイン・コンサル社ではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

「最初はシステムエンジニアです。大学時代はプログラミングをほとんどやっていませんでしたね。入社してゼロからHTMLやJava、JavaScriptを勉強して、Web系の業務システム等を作っていました」

ーーSalesforceの導入支援事業は、もともとウイン・コンサル社の新規事業としてスタートされたそうですね。

「はい。あの当時、僕は30歳に差し掛かるころでした。今後のキャリアを考えるなか、周囲には絶対に勝てないスーパーエンジニアがいて、じゃあ自分には何の武器があるんだろうと悩みました。そのタイミングで、社内でちょうど新規事業のアイデア募集がありました。『新規事業にチャレンジすれば何か見えるかもしれない』と思って手を挙げたんです」

キットアライブ社ホームページより

ーーどのような新規事業を考えられたのでしょう。

「具体的なお話はちょっと恥ずかしいのですが、企業向けのITビジネスを考えていました。この時、ソフトウェアを動かすためのレンタルサーバーを探していて見つけたのがSalesforceです。仕組みとしてはiPhoneに似ています。さまざまな業務アプリが動かせるiOSのようなシステム基盤があり、アプリを売り買いするAppStoreのようなマーケットもある。高額なレンタルサーバーを使うのをやめて、Salesforce上で動くソフトをつくることにしました」

「ただ、Salesforceを知れば知るほど考えが変わったんですね。アプリマーケットにとどまらず、CRM(顧客情報管理やSFA(営業支援)といったビジネスを支える基幹システムが本当に素晴らしく、惚れこみました。これ、すべての北海道企業が導入したらいいのに、と思ったぐらいです。まったく偶然の出会いでしたが、当初考えていたアイデアをピボットし、Salesforceそのものを道内企業に広げるビジネスを始めました

顧客とともに成長するプロダクト

ーーSalesforceの導入支援事業は最初から軌道に乗ったのでしょうか。

「事業を始めた2007年が一番大変でした。今や『クラウドファースト』が当たり前の時代ですが、先程も申し上げたように、当時はサーバーを買うかどうかといった時代です。事業環境が今と大きく違います。新規事業なので、最初は1人で始めました。作業量の限界もあるなかで、三歩進んで二歩下がるような毎日。うまくいかない時は本当にふさぎ込みました」

ーー何が心の支えになってきたのでしょうか。

「応援して下さる方の支えです。コツコツやるなかで、少しずつお客さんが増えてきました。東日本大震災で被害を受けたお客さまが、自分の会社を維持するのも大変なのに、お金をかき集めて仕事を発注してくれたこともありました。ウイン・コンサル社も、なかなか売上が上がらない中で事業を続けさせていただきましたし。私たちとしても、そうした北海道のお客さんとの関係性を切らさず大切に守ろうと思ってきました」

キットアライブ社ホームページより

ーー長い時間軸のなかでお客さまとの関係性を維持発展してきたのですね。

「Salesforceというプロダクト自体が、そうできているんです。例えばATMのシステムであれば一回作れば基本的にそれを使い続けることになりますが、私たちが作るSalesforceのシステムはそうなっていません。スマートフォンが登場したり、会社の規模が大きくなったりと、顧客のビジネス環境は常に変わっており、そうした環境変化に合わせてアップデートするのがSalesforceというプロダクトになります」

ーー顧客とともに成長するシステムだと。拡張性が高いというか。

「はい。導入のファーストステップとして、例えば営業部門でSalesforceを小さく導入してみる。顧客管理と営業案件の管理がうまく回ってくると、今度は見積書を含めた帳票を簡単に出せるよう拡張してみる。さらに受注情報や品質管理、顧客の問い合わせ情報なども段階的に紐づけていき、全社に導入を広げる。といった具合に、デジタルの世界で拡張できるのがSalesforceの強みだと思います」

札証上場で知名度UP 人材採用を加速

ーーウイン・コンサル社からSalesforce部門の事業譲渡を受け、2016年にキットアライブ社として独立されました。国内のクラウドサービス市場も急拡大するなか、今年9月には札証アンビシャス上場も果たしました。追い風が吹いていますね。

「おかげさまで私たちのビジネスに対する需要は二次曲線的に伸びています。ただ、この急激に伸びる需要曲線に私たちが追いつくには、どうしても人材が必要です。多くの能力ある人材を集めるため、この北海道で会社の知名度を上げたい。そうした狙いから札証アンビシャスに上場させていただきました

ーー人材採用は道内IT企業共通の課題です。キットアライブ社の採用戦略をうかがえますか。

「現在力を入れているのは新卒の採用と育成です。道内の産業規模ではエンジニアの数自体が少なく、中途採用は非常にハードルが高い。ですので新卒や第2新卒となる若い世代へのアプローチを強化しています。今春は6人採用しました。UIターンを考えている転職希望者にも今後はアクセスしていきます」

キットアライブ社ホームページより

残業時間で技術学んで 若手が喜ぶ独自制度

ーー若い人材を増やし育てる。骨太なビジョンですね。具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。

「代表的なものでは『もっとアライブ』という制度がございます」

ーーもっとアライブ!ユニークな制度名です。

「はい。私たちの会社には、社名をもじった制度が幾つかあります。この『もっとアライブ』は、資格や専門技術を勉強するために残業時間を使っていいという制度です。資格を取ったら一時金を支給するという企業は多いと思いますが、私たちは勉強するという努力に報います」

ーーいつから始まったのでしょうか。

「2018年です。入社2、3年目ぐらいの若い社員から新しい技術のインプットに時間を使いたいという声が寄せられたため、じゃあ業務時間でやっていいよ、と。当初は年間30時間を上限としていましたが、制度をもっと使いたいとの声が多かったことから、現在は年間60時間に増やしました。Salesforceにはベンダー認定資格が多いのですが、受験料も負担しています」

ーー〇〇アライブ制度は他にもございますか?

「『キッズアライブ』制度です。弊社社員の平均年齢は32歳(2022年7月現在)なのですが、結婚して家を買って、車を買って…というライフイベントがちょうど重なる時期にあります。『キッズアライブ』制度では、子育て中の社員に子供1人につき月1万円を支給しています。それだけでなく、教育や育児に関する社会貢献活動を応援するため、社員の子供1人につき1万円、四半期ごとに寄付を行っています。今年は札幌市の『さぽーとほっと基金』に51万円(2022年12月現在)を寄付しました」

嘉屋雄大社長のTwitterより(@YudaiKaya

ーー内定者を交えての焚き火会もされているとか。ユニークですね。

「札幌市内にある紅桜公園でやっています。マシュマロを焼いて皆で食べます。」

危機感が企業を変える DXへアクションを

ーー最後の質問です。道内ではDXがうまくいかない、進まないといった課題を抱える企業が数多くいらっしゃいます。成長を続けるクラウドの力を道内企業が取り込むには、何がポイントになると思われますか。

「一つは危機感です。東京の企業は新型コロナ禍が収束した後、世の中は以前のような状態には戻らないと考えています。だから、まさに今何かを変えなければならないと必死です。北海道でも、コロナが終われば元の世界に戻ると考えるのではなく、DXによって変わるきっかけだと捉える必要があると思っています」

ーーDXを進めるエネルギーが生まれていかないと。

「北海道は独自の経済圏があり、道内でビジネスを回し続けられる強さがあります。でも、これからは北海道の内外でどのような広がりを作るかも重要です。例えば人手不足という問題に当たった時、お給料を上げれば人が来ると考えている企業があるとします。でも問題の本質は人手不足ではなく、ビジネスモデルにあるのかもしれません。新たなアクションを起こす必要があります」

(構成・写真 ヤマモトテツ)

札幌から全国に広がる灯油配送DXサービス「GoNOW」 過酷な冬の配達、IoTで負担減 開発支える「ニトリのDNA」 

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 北海道の冬の暮らしを支える灯油配送業。氷点下の寒さと大雪に耐えながらの配送作業は過酷さを極め、労働環境の改善と人手不足が長年問題となってきました。こうした北国ならではの地域課題の解決に挑むサービスが、札幌から全国に広がっています。2020年に誕生した「GoNOW」です。

 灯油タンクの残量を遠隔管理することに加えて、過去の使用量から最適な配送網を構築するシステムも備えており、配送員の負担軽減に繋がっています。サービス開始から2年で、全国33都道府県に約3万台が導入されました。創業者の多田満朗さんは、ニトリのグループ企業を辞めて38歳で独立した異色の経歴の持ち主。GoNOWが急成長した背景には、多田さんが培った「ニトリ哲学」が存分に発揮されています。

  • どこにでもある灯油タンク フタに秘密
  • 「ベンチャーの戦い方がわからなかった」
  • 便利さの裏に無駄がある 伝票見てピンと来た
  • 「ポピュラープライス」から商品開発
  • 灯油切れの不安から解放 燃料店の厚い支持
  • 配送効率化へAI実装も データで未来に新たな価値を

どこにでもある灯油タンク フタに秘密

 札幌市豊平区の賃貸マンション。裏手に回ると490リットル入りの大型灯油タンクを見つけました。ここに「GoNOW」のセンサーが取り付けられているというのですが…。

 管理するアポロ販売(札幌市東区)の細川昌俊取締役が、タンク上部についたフタを取り外して見せてくれました。「これがセンサーです」。一見なんの変哲もないフタ。ひっくり返して内側を見ると、赤外線センサーの「のぞき窓」がありました。このフタこそが、灯油残量を検知する画期的なアイテムとなっています。

 2020年に生まれた「GoNOW」。灯油残量をセンサーで検知して遠隔管理し、過去の使用量から無駄のない配送スケジュールを組めるというサービスです。誰でも10秒で設置できるという手軽さ、1台当たりの利用料の安さ、配送回数を48%削減するというシステムのインパクト。現在は北海道のみならず、長野県や金沢市など全国の約300社が導入しています。

 開発したのは札幌市中央区のITベンチャー「ゼロスペック」です。創業者の多田満朗さん(45)は札幌市出身。設計事務所を経営する父親の姿を見て育ち、「いつか自分も起業したい」との思いを持ちました。地元の高校を卒業後、米国留学をへて、ニトリ傘下の広告会社「ニトリパブリック」に入社しました。

 人生を変えたのは、ニトリ本体への出向経験でした。消費者が買いやすい価格を実現する商品戦略で、日本の家具業界を変えてきた「成長企業」。会社を大きくしてきた自負や喜び、苦労を語る同僚たちの姿に、いつか自分の会社を持つという夢への刺激を受けたと言います。

「ベンチャーの戦い方わからなかった」

 なかでも最も大きな影響を受けたのは似鳥昭雄会長でした。同席する場で起業への思いを打ち明けたところ「もっと成長してからでも遅くはない。40歳になってからだ」と助言を受けました。激励の言葉を胸に仕事に打ち込んだ多田さん。ただ、時は確実に過ぎていきました。「職場環境にも恵まれ、楽しくて夢中で仕事をしていたけれど、気づけば40歳目前になっていた」。多田さんは独立を決断します。「自分の未来にとって必ずプラスになる」。迷いはなかったと言います。

 2015年12月、多田さんは38歳で「ゼロスペック」を創業します。最初にたどりついたアイデアは、GoNOWとは全く異なる医療健康分野。体に装着するウェアラブルセンサーからバイタルデータを取得し、予防医療に繋げるサービスの立ち上げを目指しました。高齢化時代の健康を守るという課題にフォーカスしましたが、軌道には乗りませんでした。「資金調達といった問題、バイタルデータに対する専門知識の欠如。ベンチャーとしての戦い方自体が分からなかった」。多田さんは振り返ります。

便利さの裏に無駄がある 伝票見てピンと来た

 ファーストアイデアが形にならないまま1年超。ふと多田さんの目にとまったのは、灯油の配送作業でした。大きなつららが下がる冬の軒下で、重いホースを担ぎ給油に向かう作業員。「大変そうだなぁ、と思って色々調べてみたんです」。燃料店関係の知り合いや自宅に灯油タンクがある友人に、配送の仕事を根掘り葉掘り聞きました。ある日、伝票を見ていてある疑問を感じます。「毎回の給油量がなぜこんなにもばらついているのだろう」

 ピンと来たのには理由があります。ニトリ時代の多田さんは、店内の備品や什器の調達コストを効率化する業務に携わっていました。そのなかで、ボールペン1本が足りなくて業者に発注する、という慣習の無駄に気づきました。「1本配達するごとに輸送費がかかっている。こうした便利さに慣れると、人間は無駄なことをやっていることに気づけなくなる。すべての便利さのなかにコストがかかっていることを学びました」

 もし1回当たりの給油量を最大化できれば、配送回数が減り、冬の労働環境が良くなるのではないかー。多田さんが思い出したのは、ゴミ箱にIoTセンサーをつけることで清掃員の回収業務を効率化している海外の取り組みでした。着想を得た多田さんは、灯油タンクに残量センサーを取り付けるサービスの開発に挑みます。ここでも生きたのが、ニトリで学んだ考え方でした。

「ポピュラープライス」から商品開発

 原価の積み上げで売価を設定するのが、スタンダードな商品開発のプロセス。ですが、多田さんはニトリ流の「ポピュラープライス」の考え方に基づき、顧客(燃料店)が何円なら導入できるのか、買い求めやすい価格から商品像を検討しました。また、機器設置のハードルを下げるため、特別な装置ではなく、フタそのものをIoTセンサー化するアイデアに至ります。「安くて手軽であることは、お客さんの喜びを第一に考えるからこそ。経営的にも厳しい中小の灯油業者でも導入できる商品にならなければ課題解決にならないと感じました」。多田さんは振り返ります。

 コストを抑えるため、特注の部品ではなく汎用的な部品でつくることにこだわりました。技術面では、油面までの距離を赤外線で測るシンプルな仕組みを採用。通信方式は低電力で低コストなLPWA(Low Power Wide Area)技術を使い、1日の計測回数を最適化することで電池1個で5年間稼働できるデバイスに仕上げました。

灯油切れの不安から解放 燃料店の厚い支持

 2018年、多田さんが札幌と夕張で実証実験を始めることになり、取り組みが新聞記事で紹介されました。「これは私たちの課題を解決してくれるものになると直感しました」。記事を見たアポロ販売の細川取締役は、すぐに連絡を取ったそうです。

 大雪が降ると街は大渋滞、かつ、一気に灯油の消費量が増えるため、配送業務は混乱を極めます。アポロ販売では、4台のタンクローリーで中央区や東区の約3000軒を配送しており、以前から配送員の負担軽減が問題化していました。細川取締役は、灯油の消費量が多く配送頻度が高い需要家を中心に、GoNOWを300軒に導入。パソコンやスマホから灯油の残量が確認でき、消費ペースがグラフで表示されるため次の給油タイミングが掴みやすくなったと言います。

 「いつになったらお客さんのタンクが灯油切れになるか、冬は心配で仕方がなかった。そうした配送員の不安の解消にも繋がっている」。細川取締役は効果を語ります。センサーを設置できる灯油タンクの種類が増え、測定誤差も近年改善されてきたそうです。「GoNOWで灯油配送の全ての課題が解消されたわけではないのですが、経験や勘に頼ってきた配送業務を補完するツールとして役立っています」と言います。

 GoNOWは2019年、総務省の「ICT 地域活性化大賞2019」で総務大臣賞を受賞。導入台数は19年が5000台、正式ローンチした20年に1万5000台、そして現在では3万台を超えました。また、20年には石油元売り大手ENEOS、通信・電気機器メーカーの三信電気からプレシリーズAで総額約2億3000万円の資金調達を達成しました。

 「配送回数を効率化できたことで、人手不足でも業務を続けることができた」「これからもさらに機能を付加して欲しい」。道内外の利用者からは、GoNOWに対する厚い支持の声が聞こえていると言います。「PMF(プロダクトマーケットフィット=商品が顧客の課題にフィットする状態)は実現できた。シリーズAの資金調達に向けて、これからが本当の勝負」。多田さんは力をこめます。狙うのは、資金拡大でプロダクトを一気に広げるマス化、コモディティ化です。

配送効率化へAI実装も データで未来に新たな価値を

 AIを活用することで、更なるサービス拡張も視野に入っています。北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授)との共同研究は今年で2年目。設置した約3万台のデータからは、地域ごとの灯油消費量の特性などが見えており、AIに機械学習させることでさらに配送効率を高められる可能性もあるとのこと。年内にはベータ版としての機能実装を予定しています。

 ゼロスペックのビジョンは「データから未来に新たな価値を提供する」。多田さんは「顧客にどのような数字的価値が提供できるか、なぜそのプロダクトやサービスでなければならないのか、徹底して突き詰めて考えていく」と語ります。事業拡大の次のステージへ、決意と覚悟を新たにしています。

編集後記>

 手稲山に雪が降り、冬の足音が少しずつ少しずつ大きくなっています。冬の暮らしを支える命綱ともいえるサービスは、配送員の高齢化や過酷な業務による人手不足が進み、地方部ではその継続すら危ぶまれています。ペイン(痛み)の深い地域課題に真正面から取り組む多田さん。デジタル全盛時代、北海道の未来を変えてゆくイノベーターなのだと感じました。(文・写真 ヤマモトテツ)

IT業界は観光にチャンスあり!!

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公益財団法人北海道観光振興機構の会長に当協会会員の株式会社アイティ・コミュニケーションズの小金澤会長が就任したということで、早速取材に行って観光×ITの未来について聞いてきました。

–今回会長になられた経緯をお聞かせください。

小金澤:現在機構の会員が587社(関連団体含む)います。コロナになって2年くらい経つ中で、会員や役員の一部の皆さんから「機構はこのままでいいのか」という話題があちこちで出ていたらしいのですね。去年の末頃からwithコロナを見据えて、従前と違う発想でいろんなことに取り組んでいかないと観光業界大変なことになる。そもそも北海道にとって観光って他の都道府県と違う位置付けだろうと。GDPに締める割合って、圧倒的に違いますよね。だからこそ変えていかなければと。その変化の司令塔を従来通りの方たちに任せていいのかという議論が起きたそうです。その中で若手に任せようという動きがあり、小金澤のところは旅行業を持っているし、関係ないわけじゃないので、候補に名前が挙がったそうなのです。

–IT業界からの参加ということで、これから変えていくのを期待されているのですね。
 IT目線で取り組みたいことはありますか?

小金澤:機構という組織もものすごくアナログで。例えばキュンちゃんグッズを売るにしても、今はアナログでしか売っていない。なぜかというと決済手段がないから。IT化という観点でいくと今は白地なので、逆になんでもできるという感じですね(10月以降オンラインショップをオープン予定)。

–IT化といってもいろいろありますよね。機構の中のIT化、観光業界のIT化、外から来る人に対するIT化。機構の役割としては周りを巻き込んでいくことですか?

小金澤:私もまだ着任して2か月ですが、機構の事業ってすごくたくさんあって。特にこの1年間だと、バスの座席を半分にするとか、ホテルの部屋を定員の半分にするなどに補助金をかけていて、執行予算を分配しています。それをどういう流れて分配しているかというと、道庁が内部で考えて、こういう事業をやるので、それについては機構でやってねって渡されるイメージですね。要は機構が指定管理団体や執行管理のようなもので、機構が公募をかけて各事業者やコンソーシアムからの応募を審査して採択する。それって結果、我々が考えているのではなく、道が考えたことを我々が代理でやっているようなものだ。そうじゃないでしょと。今道庁と話していて、我々も事業を企画させてくれと。我々がこういう事業やるべきだということを企画して、道に相談するので、道はそのための予算を取ってくれと。まさしくIT化というところで、来年の予算にどれだけ反映できるか。限られた予算だからと手をこまねいているのではなく、まずやれるところからやっていこうと。

–まずはどんなことから?

それで先日東北海道を回ってきました。今知床がすごく打撃を受けていて、現地で苦労されている話をたくさん聞きました。知床も皆さん来てねと言い難い状況で。今年の6月道議会で、知床周りのプロモーションを柔軟にできるように予算を付けてくれて、知床が考えたのがこのポストカードです。「知床に来てくれてありがとう」というのを旅館や道の駅に置いて。今何が必要なのだろうというと、今知床いくのはどうなのだろうという声ではなくて、知床行ってみたら良かったよ!という声を積み上げることが1番だろうと。

中村:ポストカード裏面にQRコードが付いていて、読み込むとアンケートに飛ぶので、旅行の目的や宿泊施設の感想を書いてもらって、その中で行ってよかったという声もいただいて。それが観光事業者の皆さんからすると、大変心強く感じて、励ましの言葉になり頑張れると。今までにない、こういうやり取りは非常に価値があると思います。

小金澤:来年アドベンチャートラベルアワードが北海道で開かれるのですが、アジア圏で開かれるのは初めてです。これは日本国内もそうですが、海外の富裕層に向けてアピールする最高の場面になります。東北海道を回って、アドベンチャートラベルのコンテンツがものすごくたくさんありました。

–そういうところでITってどう絡んでいけるのでしょうか?

小金澤:メニュー作りというか、こんなのありますよと出してもなかなか組みにくいと思います。AIガイドがいるのはわかりやすいかなと。あとは圧倒的にコンシェルジュが必要になります。それに耐えうるコンシェルジュをITで作っていけたらと。

–今後の機構の事業はどのようになっていきますか?

小金澤:これからの事業の在り方は、ガチガチに絞り込まず、テーマを柔らかめにしていきたいなと。こういう事業に対して、各事業者さんから提案型でアイデアをくださいと。それを審査していく方がいいなと。

中村:道の事業の審査条件の中をなるべく細かくしたがるのですが、そこはテーマや軸をしっかり捉えたうえで、皆さんがクリエイティブな取り組みをできるように応援していきたいです。

小金澤:今後の事業でアプリ開発を考えていて、一度で完結はしないが、継ぎ足していくものを考えています。旅前旅中旅後で、要はアプリ入れてもらっても継続して使ってもらわないと駄目じゃないですか。もういらないと消されないで、いかに長く使ってもらえるか。

–旅前旅中旅後全てで北海道を好きになってもらうは、ITにしかできないことですよね。そこにITのチャンスがありますね。

小金澤:そこなのです。キーワード。

中村:価値を繋げる、価値を感じることを、現地・現物・現人含めてデジタルで寄り添っていけたらなと。

小金澤:IT業界は観光にチャンスがあります。

入澤取材後記

これからの北海道経済、いや日本経済そのものを支えるのは、「観光」だと思っています。EVで中国の台頭を見ていると、日本の車産業の未来も陰りが見えています。これから外貨を稼ぐ一番の産業は観光になるのだと私は思います。北海道は、日本でも有数の観光地です。北海道観光が日本経済を支えていくことになることは間違いありません。そこの司令塔である観光機構のトップに、ベンチャー企業のトップが就任するというのは、とてもワクワクして、私も話を聞いてきました。

観光地に行く前、行ってる最中、そして、帰ってきた後も、ずっとその観光地を繋げる役目をするのは、ITだと、小金澤会長は仰っていたのが印象的でした。北海道と観光客を繋ぐIT。世界に目を向けると色んなアプリやサービスなどがありますね。我々北海道のIT業界も「観光」に目を向け何か考えていく必要があると感じました。

コロナ下で広がる地方エンジニアのリモート派遣 営業活動を爆速させるツール「Skill-Repo」が札幌から誕生!

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コロナ下でリモートワークが普及した昨今、札幌のIT業界に対して、道外企業からエンジニアのリモート派遣依頼が増えています。札幌市中央区のアプリ開発企業インプル(西嶋裕二社長)では、増え続けるエンジニアの派遣依頼に対応するため社内向けの営業支援ツールを開発。今年6月からは、クラウド型サービス「Skill-Repo(スキルレポ)」として外部企業への提供も始めました。便利な機能や開発の裏話、将来展望まで幅広くうかがいました。

  • 社内課題を「自社ツール」で解決 新規事業の起点に
  • エンジニアスキルを簡単管理 SES営業を効率化
  • 受託で磨いた技と経験 中小企業DXに資するプロダクトを
  • 若手エンジニアが躍動 カギは「フラット型組織」
  • 「先進技術で社会に革命を」 WEB3.0に照準
  • 編集後記
ーーエンジニアの派遣依頼が増えているそうですね。

瀧野修平CTO(以下、瀧野) はい。1ヶ月単位でエンジニアをクライアント企業に派遣し、システムの開発や保守に当たるようなお仕事です。SES(システムエンジニアリングサービス)とも呼ばれます。もともとの相手先企業は札幌のWEB関連企業が多かったのですが、ここ2、3年は新型コロナの影響でリモートワークが広がり、東京や大阪、九州の企業からも派遣依頼が増えました。今では、道内より道外企業から受ける仕事の方が多くなっています。

ーーどのような企業からの依頼が多いのでしょうか?

瀧野 特定の業種はありません。弊社の強みは、ウェブのUI(見た目)をつくるフロントエンド技術。なかでもアプリ開発によく使われるJavaScriptライブラリ「React」を使った案件を得意としています。最近では警備や鉄道関係の企業様にエンジニアを派遣しました。このほかAWS(Amazon WEB Services)関係などサーバー運用のバックエンド技術でもお仕事をいただいています。

瀧野修平CTO

社内課題を「自社ツール」で解決 新規事業の起点に

ーー依頼が増えるにつれて困ったことも起きたとか。

瀧野 はい。あるプログラムスキルを持つエンジニアの派遣依頼がある場合、社内で適任な人材を探し出すことが営業活動の起点となります。ただ、この作業が結構大変なんです。案件のたびに営業担当から開発部署に対して「このプログラム言語は誰ができますか?」と呼びかけ、人材を探しだし、経歴書をつくって・・・。

ーーエンジニアが多い会社だと探し出すのも大変そうです。

瀧野 私たちの会社には約60人のエンジニアがいるのですが、各人が持つスキルは手掛けた案件ごとにエクセルで管理しており、社内に広く共有する仕組みがありませんでした。先ほど話したような問題が常態化したんです。そこでエンジニアのスキルを一括管理する社内向けツールを現場の人間が開発しました。それがSkill-Repoの原型になっています。

ーー業務改善の努力が生み出したプロダクトなのですね。

瀧野 営業部署のマンパワーを増やして解決する方法もあったと思いますが、今後業務が増えれば、さらに人手が足りなくなり、根本的な解決にはなりません。弊社はシステム開発の企業ですし、問題があればまず自分たちでプロダクトをつくって解決するというのが基本姿勢です。会社で使っている無人受付システムも自社で開発しました。

エンジニアスキルを簡単管理 SES営業を効率化

ーーSkill-Repoの具体的な機能を教えてください。

瀧野 エンジニアがWEB上の登録フォームに自分のプログラミングスキルを入力するシンプルなシステムです。例えばjavaができるエンジニアを社内で探したいなら、営業担当が登録データから対象者を一括検索するだけで可能です。エンジニアの経歴書は自動で作成され、クライアント企業にSkill-Repo上からメール送信することもできます

ーー何種類のプログラミングスキルに対応していますか?

瀧野 必要に応じて適宜追加できるので、数に制限はありません。一口にプログラミングスキルを持っていると言ってもレベルはさまざまですし、習熟度も設定できるようにしました。最新のスキル情報でSES案件に臨めるよう、登録スキルを定期更新するよう各エンジニアに通知する仕組みも設けました。

ーー社内向けツールを外部に売り出そうと思われたのはなぜでしょう。

瀧野 社内での業務改善効果が非常に大きかったからです。同業他社もSES営業で同じような課題を抱えているという話をよく聞いていましたので、社外でもニーズがあると判断しました。開発期間は約3ヶ月です。担当者7、8人がアジャイルでチームを組み、最小人数かつ最速でローンチすることを目指しました。

ーーサービス提供開始から約2カ月が経ちました。反応はいかがですか。

三浦昌大COO(以下、三浦) エンジニア5人分まで無料で使えるトライアルプランは、広告を出すたびに登録企業が増えています。「ワンストップツールでSES営業できるのが嬉しい」というポジティブな声のほか、新機能への具体的なリクエストも寄せられています。有料プランはエンジニア1人の登録につき月額500円。将来的にはエンジニア1万人の登録を目指しています

ーーアップグレードの予定を教えてください。

瀧野 SalesforceやHubspotなど企業が既に導入している営業支援システム(SFA)と連携させることです。Skill-Repoを既存のシステムにAPIで繋ぎこめれば、企業側にとっての導入効果はより大きくなると思っています。

大口真由CFO

受託で磨いた技と経験 中小企業DXに資するプロダクトを

ーー7月に東京事業所を支社に格上げされました。

大口真由CFO(以下、大口) IPO(新規上場)という目標に向け、マーケットの大きな東京での営業活動を本格展開してゆきます。弊社の収益は、東京の大企業や中堅企業などから受託するSIer事業が大半を占めています。ここでの業況拡大に向け、営業人材の採用を含めて東京の態勢を強化します。

ーーSkill-Repoのような自社プロダクトの開発も強化されますか?

大口 SIer事業はエンタープライズ層がターゲットですが、プロダクト事業は日本全国の中小企業に向けたビジネスと考えています。大企業の受託で培った経験と技術を生かし、中小企業のDXに役立つプロダクトを生み出すことが社会貢献になると思っています。収益ベースではまだ1%に満たない程度なのですが、これを将来的には3、4割まで伸ばしたいと考えています。

ーーSkill-Repo以外のプロダクトを教えてください。

三浦 小売店や飲食店向けのデジタル会員証アプリ「One Stack」を昨年6月に発売しました。お店側がクーポン発行やお得な情報の発信、会員データ管理などを行うアプリで、当初は飲食店の利用が多かったのですが、最近では大手眼鏡チェーンなど小売店での利用も広がりました。ここ数ヶ月で引き合いはさらに増えています。

ーー「One Stack」の導入が広がった背景とは。

三浦 二つあると思っています。一つは新型コロナで外出機会が減ったことを受け、小売店や飲食店がアプリでの会員向けサービスを強化していること。もう一つはSDGsの考え方が社会に広がり、紙やプラスチックでつくられた会員証やクーポン、DMを辞めて、アプリに切り替えたいという企業ニーズが拡大したことがあると思っています。

若手エンジニアが躍動 カギは「フラット型組織」

ーー札幌のIT業界は人材不足が慢性化しています。人材確保のポイントとは。

三浦 エンジニアにとって働きやすい職場環境だと思います。弊社の場合は、管理職や上司がいない「フラット」な組織体系をとっており、エンジニアに非常に好評です。

ーーフラットな組織とはどのような組織でしょうか。

瀧野 縦割りの組織であれば部長課長がいて、決裁を上げて指示を受けて…という仕事の流れがあると思います。しかしインプルでは、誰が上に立つということはなく、案件やプロジェクトごとにエンジニアが柔軟に組織され、それぞれのスキルに応じて仕事が割り振られます。

ーーなぜ好評だと思われますか?

瀧野 経験を積まなければやりたい仕事につけなかったり、社の上層部に決裁をあげるだけでひと仕事だったりと、旧来の縦割り型組織に不満を感じているエンジニアは非常に多いからです弊社はすべてが実力ベース。新卒1年目でバリバリとプログラムをかけるのならば仕事を任せます。業務管理は専門のマネジメント組織を別につくって行っています

開放的なオフィス。若手エンジニアの情報交換が活発に行われています
ーー道内人材の採用が多いのでしょうか?

三浦 リクルートサイト上で日本全国に向けて採用活動しています。大阪や京都、新潟など道外からも人材が集まっています。また、通年で募集しているインターンシップは道外からリモートでも参加できます。社員の平均年齢は20代後半です。

「先進技術で社会に革命を」 WEB3.0に照準

ーーWEB3.0関連のビジネスにもチャレンジされていますね。

三浦 NFTや地域トークンなどブロックチェーンの関連技術に昨年から進出しました。いきなりブロックチェーンというのも技術的に難しいので、現在は知識と経験の蓄積を目指すステージと考えています。ブロックチェーン技術に強い企業と業務提携を結んだほか、ブロックチェーンのECサイトやウォレットの開発に参加しました。さまざまな案件を経験することで社内に技術基盤をつくれれば、札幌の同業他社にはない強みになると考えています。

ーー世の中にVUCAという言葉が生まれ、時代の変化が加速しています。

三浦 弊社の企業理念は「先進技術で社会に革命を起こす」です。先ほど申し上げた事業戦略にしても、フラット型の組織運営にしても、一つ一つが企業理念に基づいていることをぜひ知ってほしいです。

編集後記

社内の課題があれば、自分たちでプロダクトをつくって解決する。社外でもニーズがあるとみれば、早速それをビジネスにしてみる。「Skill-Repo」をローンチするまでの流れはスピーディーで滑らか。物事を一つ立ち上げるにも腰が重くなりがちな旧来型の企業とは異なるカルチャーを感じました。大型案件を受託しながら技術を培うという姿勢も、企業経営の参考になるのではないでしょうか。WEB3.0領域での新たなチャレンジに注目です!(文・写真 ヤマモトテツ)

インプルが自社開発した無人受付アプリ。足りないものは自分たちでつくるDIY精神を感じました!

会長が行く!!建設会社が北海道IT推進協会に加入?! ~大真エンジニアリング株式会社~

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初めまして。今回から「入澤会長が行く」シリーズの記者を務めますはるかです。今日は北海道IT推進協会の新入会員企業の大真エンジニアリング株式会社にお邪魔してきました!

まず驚いたのが、建設会社とは思えない、IT化されたオフィス!
例えば・・・
・社員通用口は顔認証システム
・自動で花壇に散水するシステム
・アレクサに話しかけて動くエレベーター
・自動で会社のライトアップ開始
・カーテンが自動で開閉
・モニターで監視カメラ、現場の状況等すべて管理
・工事部の方も作業用モニター4面
・スマートメーターのデータで電気使用量や工場の温度・湿度管理
・床暖ボイラーは室温により自動ON/OFF 等
オフィスの中のいたる所にITシステムが導入されていました。

建設業界ということで、社内にはショールームの要素もありました。現在は、休憩室として畳の部屋を作っていて、鉄道のジオラマや水槽なども完備するそうです。インタビュー開始前からワクワクしながら見学をさせていただきました。

IT化のきっかけ

‐‐もともとは何をされている会社ですか?

大地:もともとは管工事の下請けがメインの会社でした。前職を辞めるときその会社の社長から請負でやってみないか?という声をかけていただき始まった会社です。

‐‐どんなシステムからIT化を開始したのですか?

大地:創業から2年くらいで、請求書などの管理が煩雑化し、ソフトを使って管理したほうが早いのでは?また差別化にもなるのでは?と思い、始めたのが最初です。
いろんなシステムを使ってみて、使えたり使いこなせなかったり。構想はあるけど、ソフトを乱発しすぎて統制が取れなくなり、その頃に佐藤が入社してくれました。日報管理システムを自社で作り、それをベースに会社のシステムを組み始めました。IT補助金もおり、今のOnedriveのような機能のWEB上でファイル管理するシステムをつくる構想でした。使い勝手が悪く、今はOnedriveを使用しています。佐藤とシステム会社の方が作りました。

‐‐佐藤さんはどのような経緯で入社されたのですか?バリバリのエンジニアですよね?

佐藤:前職はシステム開発の会社に勤めていて、定年退職をしました。もともとは電気関係の国鉄の職員で、民営化の2年前にソフトウエアの勉強として出向していたのが、前職でした。定年後は電気工事やりたいなと。やっぱり電気好きなのですよね。就職先を探していて出会いました。

大地:とりあえず物運びでもいいと言ってくれていたので、最初は現場にも出てもらって。半年くらいの間に、退職とかもありましたが、1番高齢で1番経験のないなか最後まで残っていたのが、佐藤さんでした。

‐‐最近まで現場に?

大地:2018年からシステム関係を担当してくれています。非常にマッチした人材です。

‐‐やむにやまれず効率化しているからこそ、人を採用して内製化させているのが素晴らしいですね。

北海道IT推進協会に加入

‐‐どうして北海道IT推進協会に加入?

大地:事務員から、今の若い子たちはITに興味を持っている子が多いので、加入してみてはどうかと。弊社もいろいろやっていますが、宣伝する場面がない。協会に参加すると認知度が上がる。IT協会はいろんなイベントもある。我々の業界はイベントや宣伝活動が弱い。何をやっている団体なのかなど認知度が低く、悪いイメージが強くて、悪循環なので。

‐‐他にはどんな理由がありますか?

大地:自社で行っているデジタル関連のバージョンアップのための情報収集や企業との交流やイベント、セミナー参加による社会勉強、企業交流及びレクリエーションなどを通して、まずは社内のデジタル化に対する意識向上を目的にしています。そこから建設業界へIT化を推進していきたいと考えています。弊社は自分たちが活躍してきた建設業の環境改善するために、バランス思考が必要だと考えています。まだまだアナログで偏った思考の建設業の未来に、DXを浸透出来るようにと考え、活動しています。

これからの展望

‐‐現在は自社の専用システムを自社で作っているのですね。他社に売る予定は?

大地:まだしていないですね。これからやっていきたいと考えているところですね。

‐‐これからやっていこうと思っているシステム開発は?

佐藤:これからやろうと思っているのはECサイトの立ち上げです。補助金を使いまして、ECサイト+建設業界のDX化推進も考えています。ECサイトの傍らに、何か別の事務処理的な機能を作って、協業会社さん等に使っていただき、建設業界のDX化を推進していきたい。ECサイトと連携する弊社独自の見積もりシステムを作ろうと。

‐‐見積もりシステムはどんなものですか?

大地:複合的な見積もりの仕組みを作ろうと。例えば、管工事なら管工事、電気なら電気とか建築なら建築と、基本は分かれている。それらを一緒に作ろうとしています。見積もりのベースはあるので、それらを組み合わせどう動かすか。

‐‐BtoCよりはBtoBですか?

大地:BtoCとBtoBの両方です。我々の業界では単品の物を売りが多くて、例えば便器1個、エアコン1個交換くらいのECサイトはあるのですが、複合的なものはないのです。例えば配管何m伸ばして、壁はがしてどうこうというのは1回1回現地に行き、やらないといけないので。

‐‐それはなかなか大変そうですね。

大地:まずは簡易的なものから作り、肉付けしていこうという考えです。

‐‐すべて内製化?

大地:はい。基本的には企画があって、他社さんに依頼して。それにERPをくっつけます。うちもいろんなシステム、ソフト、アプリケーション使っていて、バラバラなのですよね。これが業務効率を悪くしている1つの要素でもあるし、IT離れするところでもあると思うのですよね。ここをみんな集めて、1つのシステムに組み込むことによって、そこでやり取りし、データを連携すれば、皆さんもストレスを少しでも抱えないで扱えるようになるのではと。

‐‐内製化しようとしていることが、本当に素晴らしいですね。

SDGsの取り組み

‐‐オフィス内にSDGsやいろんな表彰関係がありますが、意識されていることがあるのですか?

大地:何のために仕事して生きているのかも含めて、基本的には人のために人間って生きているというのが私の考えです。何のために仕事しているのかというと、 必ず依頼者がいるわけですよね。依頼者のない仕事って多分探す方が大変だと思うのですね。誰かが求めているものに対して、依頼されたこちらが動く=人のために動いている。 それを、ただ単にお金のやりとりだけではなくて、お客さんがどうしたら喜んでもらえるかを考えるとサービスの質が上がっていくという私の考えです。その中でやっていることです。弊社は寄付活動や社会貢献活動をやってきていて、それが結果的にSDGsに繋がりました。法人は基本的には利益を還元する組織なので、皆さんで協力して世の中を良くしていきたいと考えています。

‐‐素晴らしいですね。

大地:弊社の思想としては、何かやるにしてもバランスで考えている。偏りすぎると考え方も偏るので。いろんなこと手広くやっているように見えるかもですが、繋がりがあるので、本業ややりたいことに繋げていこうと考えています。

IT化に対して、また建設業界に対しての大地社長の熱い思いが、ひしひしと伝わってくる時間でした。これから一緒に北海道のIT業界、そして北海道を盛り上げてくれる素敵な会社に出会いました! 次回はどんな会社に出会えるのか楽しみです!

<文:ひらまつはるか>

SaaS比較サイトNo.1「BOXIL SaaS」を運営 スマートキャンプ社が札幌に精鋭部隊を置く理由

今夏からMikketaでライターを務めるヤマモトテツと申します。政治経済からグルメまで10数年の取材経験がありますが、本格的にIT業界をのぞかせていただくのは初めてです。今回はSaaS比較サイトNo.1「BOXIL SaaS」を運営するスマートキャンプの北海道支社(札幌市中央区)にお邪魔し、お話をうかがいました。

  • アウトドア店と間違える?社名は「スマートキャンプ」
  • なぜ北海道に拠点?札幌が持つインサイドセールスの可能性
  • 家電量販店⇒EC⇒SaaS 平成令和のキャリアチェンジ
  • 目指すは東京と同じスピード感 UIターンの受け皿に
  • 「テクノロジー情報格差」北海道からなくしたい
  • SaaSの世界を道案内 必読の『SaaS業界レポート』
  • 編集後記

アウトドア店と間違える?社名は「スマートキャンプ」

ーーいきなり素人目線の質問ですみません。スマートキャンプという社名、アウトドア店と勘違いされることはありませんか?

上田恭兵さん(BALES カンパニー BPO事業本部 執行役員) あります(笑)。飲食店フロアに隣接する他地域のオフィスでは、アウトドア用品店と勘違いされたお客様が実際に立ち寄られたりしますが、私たちの会社を知っていただく良い「つかみ」になっていると感じます。

ーー社名からは想像もつかないお仕事内容です。詳しく聞かせていただけますか?

上田さん はい。私たちスマートキャンプは「for SaaS」をスローガンに掲げ、SaaS企業のマーケティング・セールス・購買まで一気通貫で支援するソリューションを提供しています。

ーーSaaS企業のビジネスを広げるお仕事なのですね。御社が運営する「BOXIL SaaS(ボクシル サース)」は私も利用したことがございます。

上田さん 「BOXIL SaaS(ボクシル サース)」は、SaaSの提供元企業とSaaS導入を検討している企業のビジネスマッチングプラットフォームです。集客力が高く、効率のよいマーケティングソリューションとなっています。例えばですが、コミュニケーションツールや企業向け経費精算ソフト、業務管理ツールなどのサービスを掲載させていただいております。

ーーSaaS導入に際しての比較検討に役立ちそうですね。

岩井祐介さん(BALES東日本統括 副本部長 兼 北海道IS部部長) SaaSの世界は、さまざまな業種業態のサービスがすごいスピードで生まれています。企業様にとっては、自社にふさわしいSaaSを選ぶのが本当に難しくもあり、そこをご支援するのが私たちスマートキャンプです。

BOXIL SaaSのトップページ。商品名やカテゴリでSaaSが検索できる

上田さん 「BOXIL SaaS」のサービス掲載実績は累計で800社以上にもなり、「SaaS導入推進者が選ぶサイトの第1位」(※)となっております。このほかSaaSを中心とした様々なサービスとの最適な出会いを実現するオンライン展示会「BOXIL EXPO」も多くの企業様にご参加いただいております。

(※2020年9月実施 株式会社ショッパーズアイ「SaaS比較メディアに関するイメージ調査」より)

なぜ北海道に拠点?札幌が持つインサイドセールスの可能性

ーー北海道支社は、スマートキャンプ初の地方拠点として2019年に設立されました。どんなお仕事をされていますか?

上田さん 先ほどSaaS比較サイトやオンライン展示会といった取り組みを説明しましたが、北海道支社では営業代行サービス「BALES」を展開しています。

上田さん SaaSの開発元企業の多くは東京にあります。私どもは、それらの企業様などから依頼を受けて営業活動を代行しています。用いているのは、電話やメール、ビデオ会議システムを用いて非対面でコミュニケーションする「インサイドセールス」という営業手法です。人の力とテクノロジーの力で総合的にSaaS企業を支援しています。

ーーコロナの時代を先取りする働き方ですね。

上田さん BALESは2017年にフルリモートスタッフたちで事業を始めており、当初から勤務地を問わず働ける仕組みがありました(※現在は週1回出社が基本)。ただ、やはり拠点があって一つの場所でコミュニケーションをとる方が、営業のオペレーション上は円滑に仕事を回していけるだろう、と。いわゆる「オフラインの重要性」ですね。そこで2019年、北海道に拠点をつくりました。

ーーオフラインの重要性。これもコロナの時代を先取りした課題感ですね。

上田さん 例えば、インサイドセールスには職場内での営業ノウハウの共有が必要なのですが、フルリモート下ではそれが難しい。意識せずとも勝手に耳に入る情報というのがないわけです。このほか、組織としてマネジメントする上でも、オフライン環境があった方が良いという結論になりました。

ーー支社をつくるなら東京に近い候補地は他にもありそうです。

上田さん 札幌は優秀な人材の採用ができるという面が大きいかもしれません。北海道大学に代表される国公私立の大学があり、教育レベルが高いエリアですので、将来的に活躍できるIT人材との接点が多いと考えました。加えてコールセンターが非常に多い地域ですので、インサイドセールスのベースとなる非対面でのコミュニケーションスキルを備えた人材が多いと考えました。

ーー現在、北海道支社の社員数はどれぐらいでしょうか?

岩井さん 70〜80人が札幌勤務です。メーンは20代後半から30歳前後ぐらい。インターン生や主婦のかたもいます。このほか福岡や東京の拠点で働くスタッフもいます。

上田さん コロナ時代、テレビ電話などを活用した非対面での企業活動は当たり前になり、インサイドセールスの世界には追い風が吹いています。働き方の選択肢も広がりました。私どもでは、現在では週1日の出社と自宅勤務のハイブリッド制を採用しています。

ーー人材の採用は進んでいますか?

上田さん 特に北海道はコロナの影響で観光や飲食といった接客サービスで顕著に仕事量が減りました。そうした中で、私どもの北海道支社でジョブチェンジ、キャリアチェンジをした方がたくさんいらっしゃいます。社内の教育体制も整えましたので、未経験の入社であったり、法人営業を対面でやっていたり、そういう人材の転向も増えています。まさに今、隣に座っている岩井もキャリアチェンジした一人です。

家電量販店⇒EC⇒SaaS 平成令和のキャリアチェンジ

岩井さん はい。私は室蘭生まれ、札幌育ちの道産子です。家電量販店のスタッフからキャリアをスタートし、EC業界に転じて4年ほど働きました。スマートキャンプには20代後半で入社し、現在3年が過ぎたところです。

ーーEC業界からSaaS業界へ移られたということですね。なぜでしょう。

岩井さん 「テクノロジーの力で社会の非効率をなくす」というスマートキャンプのミッションに共感したからです。仕事を進める上でのさまざまな不便さや不自由さって、誰にでも経験があると思いますし、私も前職時代に感じていました。そうした不便さをSaaSの力で解消する仕事にチャレンジしてみたいと思いました。

ーー未知なるSaaS業界に飛び込んでみて、いかがでしたか?

岩井さん SaaSがこんなにも沢山あるのかと驚きましたし、同時にこうしたサービスを世の中に広げてゆくことが社会のDX推進、効率化支援になると感じました。

ーーSaaSのみならず、インサイドセールスも岩井さんにとっては未知の世界でした。

岩井さん 私自身、以前の会社でコールセンター勤務の経験がありますが、今までのやり方でいうと、テレアポに近い感覚でひたすら電話をかける、というのが主流だったと思います。ですがBALESのインサイドセールスでは、私たちのクライアント様のサービスをどのような企業様が必要としているのか分析し、ターゲットを絞った上で営業活動を行っています。ターゲティングから入ると、思った以上の成果が得られると感じました。

ーー職場の空気感はいかがでしょうか?

岩井さん スタッフ間の情報交換が活発なので、企業様をご支援する上で必要なナレッジを共有しあえる環境になっていると思います。インサイドセールスのトレンドや成果を共有するため、毎週「インプット会」を開いているチームもあります。あと、どのコールセンターと比べても「フラット」だと思います。

ーーフラットな空気というのは、スマートキャンプさん独特の何かがあるのでしょうか?仕組みとか言葉とか。

岩井さん 弊社が定める行動指針に「SOCS」というものがあります。SはSmartThinking、OはOwnership、CはCollaboration、最後のSはSpeedという意味です。SOCSは社訓として毎朝唱えよ、いうものではないですが(笑)、社員にはしっかり浸透しています。私たちの「フラット」さは、SOCSのうちのCollaborationが生み出しているのかもしれません。

スマートキャンプの行動指針「SOCS」(会社説明資料より)

目指すは東京と同じスピード感 UIターンの受け皿に

ーー上田さんにも入社経緯を伺っていいでしょうか?

上田さん はい。私は帯広生まれ、釧路育ちの道産子です。高校卒業後に上京し、テレマーケティング領域で働いてきました。北海道にUターン就職したいと思ったとき、東京と同じスピード感や考え方で仕事ができる会社を探していたらスマートキャンプに出会いました。

ーー北海道内の企業には、UIターン就職の受け皿が少ないとも聞きました。

上田さん 私どもスマートキャンプ北海道支社としての「思い」をお話させてください。北海道は、首都圏などからのUIターン希望者が非常に多いと言われており、幾つかのデータでも傾向がはっきりと見えています。ですが、UIターン希望者にあった働き先や職種がないため、道外に流出する問題がありました。私たちが働く環境や選択肢を増やすことで、少しでもこうしたミスマッチを解決できれば、と思っています。

「テクノロジー情報格差」北海道からなくしたい

ーー北海道ではSaaSの導入企業は広がっているのでしょうか?

上田さん 道内企業へのSaaS導入はコミュニケーションツール、決済ツールなどにとどまっており、まだまだ広がっているとは言い難いです。

ーー私の身の回りでも、導入に踏み切れない会社は多い印象です。

上田さん SaaSを使うことで飛躍的に生産性はあがる、という実例を知ることが大切だと思います。例えば弊社ではインサイドセールス業務の管理、効率化を実現するクラウドサービス(BALES CLOUD)を提供していますが、あるスポーツチームに導入していただいたところ、試合やイベントごとに数時間かかっていたサポーターへのメール送付がわずか数分に削減でき、ミスも減りました。

ーー導入のインパクトは大きいですね。

上田さん 日本の市場は人口が確実に減っており、北海道でも傾向は同じです。これからの時代、企業が新たな事業を伸ばすうえでテクノロジーとの共存は必須です。

ーー同感です。でも、北海道にいるとテクノロジーに関わる情報が耳に入りません。

上田さん 情報の格差は確かにあります。「インサイドセールス」というワード一つにしても、東京と北海道では反応がまったく違います。私たちは、この「知られていない」という所が重要だと思っています。そもそも「インサイドセールス」とはどういうものなのかを、私たち自身の手で北海道で発信してゆかねばと感じていますし、幾つかの取り組みも進めています。

ーーどのようなことでしょう?

上田さん 社員がどんな思いで働いているか地下鉄全駅に広告を出して発信しました。また、札幌の女子サッカーチーム「ノルディーア北海道」(なでしこリーグ2部)の選手を社員に採用し、アスリート支援にも取り組んでいます。その社員は昼はスマートキャンプ、夜はサッカー選手と「2足のわらじ」で頑張っています。

SaaSの世界を道案内 必読の『SaaS業界レポート』

ーー最後に、北海道の企業様にメッセージをお願いいたします。

上田さん 弊社で毎年発行している『SaaS業界レポート』はオススメです。SaaS業界がなぜ注目されるのかだったり、市場観だったり、さまざまな情報を盛り込んでいます。

『SaaS業界レポート2020』(スマートキャンプ社より)。市場規模から業界トレンド、カオスマップまで幅広く網羅。最新の2021年版はこちらから

ーー私も毎年拝見しております。カオスマップをみると、これほどSaaSがあるのか、ということにいつも驚きます。SaaS業界の「道案内」になるレポートですし、北海道では手に入らない情報が満載だと思いますので、ぜひ、北海道の企業のみなさまにも読んでいただきたいなと思います。

<編集後記>

どこかで一度は耳にしたことがある「SaaS」や「インサイドセールス」という言葉。スマートキャンプ様にお邪魔して、以前より身近に感じることができました。驚いたのは、東京のような大都会ではなく、札幌に最先端のSaaSビジネスの現場があるということ。ひょっとして北海道にはこんな面白い現場がまだまだあるのでしょうか?ワクワクが広がりました。

<取材、文:ヤマモトテツ>

外食産業の人材不足をロボットやITで解決!!

日本全体で、外食市場規模は約18兆5338億円(一社日本フードサービス協会 2021年12月)と言われています。北海道にも数多くの飲食店があり、私たちの食生活を楽しませてくれています。

一方で、どこの業界でも叫ばれている人手不足は、外食産業でも同じです。新型コロナウィルスによる蔓延防止措置などにより、営業時間の制限が発生。また、来客数そのものも大幅に減り、人材を雇い続けることが難しくなった飲食店も多いのではないでしょうか。

今後、以前のように外食に再び気兼ねなく出られる日がきた際、「人手不足で営業が回らない」ということが無いように、どのようなことを進めれば人手不足を埋めることができるのでしょうか。人手不足を補うべく、配膳ロボットや、スマホで頼めるオーダーシステムについて、話を伺ってきたのでご紹介します!

ネコ型配膳ロボットBellaBot

札幌市白石区に本社を構える、大東ホールディングス株式会社ではPudu社の配膳ロボットであるBellaBotの販売代理店として、道内の飲食店への導入を進めています。


元々はガソリンスタンドとして、石油販売を行う会社だった同社がなぜ、配膳ロボットの販売代理店をすることになったのでしょうか?大東ホールディングスの子会社でロボットの初期導入、保守メンテナンスを請け負う株式会社大東バリューイノベーション代表取締役社長の吉田 敬一さんに話を伺いました。

吉田社長「本体である大東ホールディングスが石油販売を行うだけではなく、さまざまな事業を展開しているのですが、その中でホテル経営も行っています。また飲食店様との取引もある中で、人材不足などの課題感を体感したり話を聞くことも多くあり、配膳ロボットの販売代理店を進めようという話が出てきたんです」

BellaBotの特徴は、”猫型”のロボットであるところです。(某国民的アニメを思い出しますね)実際に動いている動画をごらんください。

配膳ロボットといえば、サーっとトレーに乗せた料理を運び、
到着した際に「到着しました」と音声が鳴るロボットも多い中、BellaBotはとてもよく喋ります。また、耳やおでこを撫でると、反応もみせてくれ可愛らしさも感じます。

実際の店舗では、配膳はもちろんのこと、下膳時も対応してくれるBellaBot。今までは、お皿を全て厨房へ下げた後、各テーブルの拭きあげにホールスタッフが戻ってきて、机を拭く作業が必要でした。BellaBot導入後は、下膳はBellaBotにおまかせをし、スタッフは机拭きを担当することができ、厨房との往復が減り作業効率が上がったと言います。

お店にきていたお客さんは配膳ロボットの珍しさに、BellaBotが動くたびに釘付けになっていました。

今後、大東ホールディングスはBellaBotを北海道や日本全国でどの様に展開させていく予定なのでしょうか?

吉田社長「大東ホールディングスの展望を代弁すると、今後は介護施設への導入も進めていきたいと考えています。介護施設の配膳は毎朝70食を一気に運ぶなど、配膳のためだけに人を雇わなければいけないぐらい、とてもマンパワーがいるんです。そこにこの配膳ロボットを投入することで、すこしでも負担軽減ができたら良いな。と思っています。またBellaBotの姉妹商品であるKettyBotは表面に長い画面が着いているんです。そこにお孫さんの動画を流すなどができたら、よりよい配膳になるのではと考えています」

以前であれば、人件費削減のためにシステムを導入する!という企業も多かったかと思いますが、現状は人手不足の影響や新型コロナウィルスの影響もあり、少ない人数で店舗を回さなければいけません。それ故に、効率化できるところは効率化し、より顧客にとっても従業員にとっても、より便利な店舗運営が求められているのかもしれません。

顧客のスマートフォンでセルフオーダー

配膳と同じぐらい、もしくは配膳よりも長い時間接客が必要なものに「オーダー取り」が挙げられるのではないでしょうか?飲食店へいくとテーブルにタブレットが設置されており、従業員がオーダーを聞きにいくことなく、タブレットで来店者が注文をする。そんな経験をされたことがある方も多くいらっしゃると思います。

多くのお客さんに同時に呼び出しベルを押された際、注文をなかなか取りにいけずに、お客様をお待たせすることが、これらのシステムの導入によってなくなったのではないでしょうか。一方で、タブレット端末自体が「安い」とはいえない物。セルフオーダーのシステムを導入しようとしても、初期費用が高いというデメリットが、タブレット型のセルフオーダーシステムにはありました。

そんな中、最近北海道でも目にする機会が増えてきたのが「顧客のスマートフォン」でオーダーをする体験です。

北海道の飲食店でも複数導入されているOkage DX Platformもそのソリューションの一つです。 Okage株式会社の開発・提供するモバイルオーダーは、お店にそれぞれセルフオーダー端末を導入するよりも、安価に、さらに券売機を導入するよりも安価に、オーダー/販売システムを導入することができるというのです。どうしてこの様な製品が生まれたのでしょうか?広報を担当されている竹田さんにお話をうかがいました!

https://okagekk.com/service/mobileorder-in/

竹田さん「Okageは、弊社代表の内田が知人の飲食店オーナーから、セルフオーダーシステムの導入を検討していると相談をうけた際、導入費用がとても高く、それであれば作ろう!と立ち上がったことがきっかけで出来た製品なんです。もっと飲食店経営に優しく、安価なもので便利に使えるものを作りたい、という想いで開発を進めてきました」

元々は、飲食店のため!と始まったOkageですが、「注文」という行為は、飲食店だけで実施されるものではありません。Okageはモバイルオーダーという特性を活かし、直近はスタジアムでの事前オーダーでも導入が進んでいます。スタジアムで何かを食べたいな、何かを買いたいなと思っても、長い行列に並ばなければいけなく、並んでる間にキックオフ!や試合再開!なんて経験をされたことがある方もいるのでは無いでしょうか?もしくは、長く並ぶのが嫌だからスタジアムでは何も買わないでおこうとされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。せっかくスタジアムに足を運んでくれたのであれば、スタジアムでしか食べられないものを食べるという楽しみもあるはずです。Okageを導入することで、長時間ならぶことなく試合時に受取所で受け取るだけで良いという、「オーダーテイメント(「オーダー」と「エンターテイメント」を組み合わせたOkageの造語)=オーダーをもっと楽しく!」という新しい体験を作り出しています。

また、この取り組みは飲食店側にとっても事前に販売する個数がわかるので、発注効率があがったり、廃棄量が減るなどのメリットもあります。

竹田さん「某案件で、メニューに対して、原材料の登録と在庫の登録を細かくすることができ、原材料が切れたら、売り切れという表記に切り替える、という機能も開発した実績があります。通常であれば売り切れになることを機会損失ととらえ、余分に材料を発注する事業者も多くいます。それゆえに毎日10〜20%程度の材料が廃棄されています。こういった機能を提供することで、フードロス削減の一助も担えたらと考えています」

Okage DX Platformは、店内外のモバイルオーダー、キッチンディスプレイ、セルフレジや厨房のオーダー受信端末、タブレットオーダーなどなど複数の製品を作り、店舗そして顧客の体験向上を進めています。今後はどの様な製品開発を進めていくのでしょうか?

竹田さん「”こだわりとおもてなしを輝かせる。”という弊社のミッションの元、今後は注文や支払いといったところだけではなく、顧客関係の管理機能を持たせ、新規ご利用のお客様、リピーターの方などそれぞれのステータスに対して異なるおもてなしがしやすい仕組みづくりを支援できるサービスの開発を進めています」

デジタルの力をつかうことで、確かに人手を補うことができるのかもしれません。ですが、人手不足を補うということだけではなく、人じゃなければできない「おもてなし」に集中できる仕組みを作るというのも、大きな飲食店DXなのかもしれません。

Okageのモバイルオーダーはこちらから触ってみることができるので、
ぜひ見てみてください!

<取材、文:新岡 唯>


<会長取材後記>

コロナ禍で多大な影響を受けた飲食業界。店を休業せねばならず、その間、アルバイトの方々に一旦辞めてもらってしまったため、再度復活した時にお店を開けてもスタッフがいないという現状があるようです。そんな中、テクノロジーを使って、人手不足を解消するサービスが、どんどん出てきております。魚べいやスシローなどの回転寿司なんか行くと、予約から席への案内、オーダーから会計まで、ほぼ無人化で進められてますよね。今回取材した、配膳ロボも今後当たり前のように使われていくのではないでしょうか。私自身、実店舗でどのように使われてるのか、興味津々でしたが、スタッフさんが使いこなしてるのを見ると、「これは普及するな」と思いました。モバイルオーダーも、注文する際に、店員さんを呼んで口頭で注文して、その後、店員さんも確認のため復唱します。これを、自身のスマホでQRコードを読み込み、メニューから注文する事が出来れば、ダイレクトに厨房に届き、少ない人数でも店舗運営が可能となりますよね。

また、アルバイトを、スキマ時間にちょっとだけ行うという市場も出てきておりますね。全国的には、タイミーさんはとても有名ですが、道内企業でも、ラジオ局のFMノースウェーブ社がこんな取り組みをしています。northwave プチバイト 「https://puchibai.co.jp/

我々道内IT企業も、テクノロジーの力で、省人化、省力化することで、コロナ禍で傷ついた飲食業界の復活を後押ししていければと思っております。

<文:入澤拓也>

オール北海道でデジタル地域通貨の普及等を目指す「QUALITY HOKKAIDO」

昨年11月、北海道の経済界で大きなニュースが報じられました。

北海道全域へのデジタル地域通貨の普及とデータを活用したオープンイノベーションを目指す業界横断の団体で構成される「QUALITY HOKKAIDO一般社団法人」の設立です。

設立時の代表理事コメントで、サツドラホールディングス株式会社代表取締役社長兼CEOでもある富山 浩樹さんはこう記していました。

「北海道を大量生産・大量消費といった従来の枠組みではなく、北海道そのものの価値・質を高め、またデジタルも活用した地域のスマートライフを実現することで持続可能な北海道を目指したいという思いから“QUALITY HOKKAIDO”と名付け、道内企業・団体の皆様と当法人を設立しました。オール北海道体制でデジタル地域通貨をはじめ、道内の社会課題を解決するサービスを生み出し、日本の地域の新たなモデルを創っていきます。」

設立から5ヶ月たった今、QUALITY HOKKAIDOはどのように進んでいるのでしょうか?また、今後目指すところは?サツドラホールディングス インキュベーションチームの高橋幸裕さんに話を伺いました。

再び日の目を浴びる地域通貨

地域通貨は、特定の地域やグループ、コミュニティの中で発行され使用される貨幣のことをさします。2000年ごろに日本国内では「地域通貨ブーム」と呼ばれる現象が起きたことを、覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。北海道では1999年に下川町で「LETS Fore」、2000年には札幌市で「ガバチョ」、「ガル」(苫小牧市他)、「クリン」(栗山町)などの地域通貨が登場し、地域で活用され当時は全国で約3,000もの地域通貨が存在したという記録が残っています。

地域通貨は、それぞれ法定通貨と同じように紙幣を発行する「紙幣(紙幣発行)型」通帳を持ち、利用都度記帳をする「通帳型」など、さまざまな手法がとられてきました。しかしながら、国からの助成金が終わったことや、運営負担の大きさなどを背景に、2010年ごろを境に減少を続け、地域通貨ブームは下火へと転じていきました。

昨今、再び「地域通貨」という言葉を耳にする機会が増えてきたと感じる方もいるのではないでしょうか。

IT技術の進化によって、スマートフォンを活用したキャッシュレス決済や、インターネットバンキングなどのフィンテックが広がり、地域通貨の運営負担や維持が軽減されたことをきっかけに、再び注目を集めているというのです。北海道でも電子地域通貨が徐々に広がりを見せ、美瑛町では「Beコイン」、ニセコ町では「NISEKO Pay」富良野市では「デジタル健幸ポイント」といった、新しい施策が各地で始まっています。

「地域通貨」を新たに作る真意

地域それぞれで導入している地域通貨と、QUALITY HOKKAIDOが目指す「北海道の地域通貨」導入する地域にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?

高橋さん「メリットは主語を何に置くのかによって、変わってくると思います。例えば、ユーザーを主語に置いた場合は、当然地元だけで使える通貨というのも、とても重要なのですが、通貨自体に流動性とか使える場所が少ないと、”通貨”というものは回らない。例えば札幌で地域通貨ができたとして、隣の江別とか当別とか近隣市町村でも使うことができたら、ユーザーはいろんなところで使ってくれるようになりますし、使うメリットも増えると思います。一方で、地元の加盟店側のメリットで考えると、地元の商店街と、我々のサツドラのようなチェーンの店舗がある町だとしたら、地元の商店街の方々にとってみると我々の店舗で買い物を地域の人がすることで、「消費されたお金は地元に落ちてないよね」と思われることもあります。地元の中小企業の方からすると、「消費するのであれば、やっぱり地元にお金を落として欲しい」という、思いを抱かれる方々も多いと思います。地域通貨を導入することで、そういった地域へお金を落とすことに対して、非常に有効に繋がるのかな、と思っています。私たちは、消費者側と加盟店側双方にメリットがあるところを目指していきたいと考えています」

北海道だけではなく、全国の地方都市にも同じ課題感があるといえるのではないでしょうか。国道沿いは非常に栄えているけれども、よくよく見てみると、その土地資本の企業ではなく、別の土地に本社を持っている企業がずらっと並んでいることがあります。その場合、消費者がいくら消費をしたとしても、地域に落ちるお金は土地の賃料と、従業員に対しての時給などほんの僅かなものであり、利益から繋がる納税先は本社がある土地である。ということは、皆さんすでにご存じのことと思います。

お金周りだけではありません。ポイントカードなどで得ることができる、消費者の購買情報も同じです。私たち消費者にとっては、いろんなところで同じポイントカードを使うことができ、ポイントを貯めることができます。具体例で言うと、Aというお店で物を購入した情報はAのお店やAの本社にPOSデータとして残ります。しかしながら、購入した人はどんな人なのか、どんなものを好んでいるのかなどの、顧客情報を得てマーケティングに活用したい!といった場合、データはポイントカードを運営している企業から購入する必要があります。

高橋さん「現状はデータの逆輸入といいますか、お店で消費というトランザクションが起きているのに、またお金を払ってデータをもらわなければいけない状態になっているので、そういったところに我々も危機感を感じています。地元の資産といいますか、データ資産だよね。というところで、うまく北海道で流通させていこう、回していこうという風に考えています」

データの利活用やポイントカードというと、サツドラホールディングスのグループ会社が運用をしている「EZOCA」があります。全道どこの地域に行っても「EZOCA」の名前を見る機会があり、データの利活用や、基盤作りというニュアンスでいくと、「EZOCA」の普及で良いのではないか?あえて、「地域通貨」に新規参入をしていく必要はあるのでしょうか?

高橋さん「毎年、加盟店が増えてきているので、一定の規模のポイントカードになってきたかなとは思うものの、データの利活用という点で見るとまだまだかなというのが、今の我々の現状です。そして、「EZOCA」ではなく、なぜ「地域通貨」という問いへの返答になるのですが、今回のQUALITY HOKKAIDOの取り組みは、サツドラだけでやろうとしているのではなくて、北海道に関連しているみんなでやろう!としているのもポイントなんです」

高橋さん「というのも、今回の座組みを見ていただくと、スポーツチームでいくとコンサドーレさんやレバンガ北海道さんが入ってくださっているのです。例えば、スタジアムで試合があって、その前や後にサポーターがどういう行動をしているのか、どういう動線で購買をしていくのか。というのを追いたいんですよ。そういう思いがあって、今回異業種の方々に参加いただいて、やっていこうとしているんです。」

コンソーシアムや団体というと、同じ業態や同じターゲットを顧客にしている人たちが集まる団体を目にすることはあれど、QUALITY HOKKAIDOのように、流通小売から、旅行業界、システムインテグレーターや不動産、電力会社など、多種多様な業態が集まるというのは珍しいことなのではないでしょうか。高橋さんは「私もびっくりした」と言い、目を丸くしていました。

将来的に目指す形は?

多くの企業が賛同し、まさにオール北海道のような形で地域通貨や地域基盤作りを進めているQUALITY HOKKAIDOですが、データの利活用や発展性を考えると当然「ブロックチェーン」という話がでてくるのではないでしょうか。

都市のデータ利活用の事例で名前が上がるのは、「エストニア」の事例です。日本のマイナンバーカードのロールモデルにもなったことでも有名な国です。エストニアではほぼ全ての行政サービスがデジタルで完結できると言われています。QUALITY HOKKAIDOが、地域通貨の取り組みや、購買情報や行動情報の蓄積を進めた先に、北海道独自のブロックチェーンの仕組みができるのではないか?と思うのは筆者だけではないはずです。

高橋さん「サツドラホールディングスとしては、ブロックチェーンのPoCをやってはいるんです。それは、個人情報や行政手続きというものよりは、決済に近い部分のブロックチェーンのPoCをやったんです。将来的には決済に加えて、データ連携の部分でブロックチェーン技術を活用できると考えています。一方で(小売の)ビジネスに実装していくには、より一層の検証が必要であるということも感じています。引き続き、関連法案である個人情報保護法や資金決済法などの動きをしっかり見ていきたいですね」

データを”オール北海道”で持つこと、それを行政サービス含め各所で活用するということは実現に向けて、まだまだ高いハードルが残っていそうです。一方で今回QUALITY HOKKAIDOが進めている決済という視点で見るとどうなのでしょうか?

高橋さん「今の地域通貨のいろんな全国的な取り組みとか多少、ブーム的な要素もあるんですけど、流れを見ていると自治体の補助金や、新型コロナウィルス関連の交付金が入り口となって始めてみたものの、(利益構造視点で見て)回っているか、っていうと・・・。というのが非常に多いですよね。なので、決済単体事業で利益を立てていくというのは、厳しいかなというのも感じていたりします。ただ、難しい点ばかり言っていてもアレなので、今回の座組みの良い点は、みんな実店舗や現場を持っている点なんです。システム屋さんが、システムを事業促進のために作るというのではなく、それぞれが店舗を持っているので、作ったシステムをうまく、PMFしながら進めていけるのではないかと思っています。今この段階で私たちが考えているのは、あくまでブロックチェーン化にこだわることなく、当面の二年間はやっぱり、QUALITY HOKKAIDOの加盟店や賛同してくださる基盤を広げていきたいですね。決済できる場所を増やしていくことによって、加盟店や消費者双方にとってのメリットが増えていくと思っています」

<編集後記>

以前、札幌市デジタル推進局へ取材に伺った際や、SNETさんへ伺った際も、個人情報保護の観点でデータの利活用が難しいという話が出てきていますが、「より便利な社会」を実現していくためには、データの利活用に関する法令の制限緩和が一つ肝になっていくと改めて感じるお話でした。

また、IT企業が手動するデジタル化の仕組みはあれど、小売業や旅行業など非情報産業の方々が進めるデジタル化のコンソーシアムというという点も、全国で見ても非常に珍しい座組みなのではないでしょうか。

北海道の名だたる事業者が参加しているコンソーシアムということもあり、今後の動向が楽しみですね!お話いただきありがとうございました。


<関連記事:教えて!わかるヒト!行政デジタル化について(札幌市)>

新春特別講演会「eスポーツの可能性」

2022年1月19日、北海道IT推進協会では新春特別講演会を開催しました。

同講演会の中では、「eスポーツの可能性」と題し、一般社団法人北海道eスポーツ協会 理事、株式会社レバンガ北海道 代表取締役CEO 横田 陽 氏にご講演いただきました。

本記事では、横田氏に講演いただいた内容を掲載いたします。


皆さん、こんにちは。

ただいま紹介いただきました

レバンガ北海道の横田でございます。

本日はお招きいただきましてありがとうございます。

入澤会長ををはじめ北海道IT推進協会の皆様には、日頃よりレバンガ北海道を応援いただきまして誠にありがとうございます。

本日はもうひとつの肩書きでございます、北海道Eスポーツ協会の理事として、大変恐縮ではございますが、「eスポーツの可能性」ということで皆様にeスポーツのことを知っていただき、興味を持っていただくきっかけになればなと思いまして、小一時間になるのです

けれどもご清聴いただければなというふうに思っておりますのでよろしくお願いします。

先ほどご紹介もいただきましたとおり、北海道のプロバスケットボールチームを運営しながら、eスポーツチームを2018年に立ち上げさせていただいたというところが、eスポーツに参入するきっかけになっています。その参入のきっかけなんかも冒頭を説明させていただいたうえで、今日はフィジカルなスポーツチームだと我々のようなバスケットボールで相手と競って戦って勝敗の結果を得られる。野球だったら、サッカーだったら、というのと同じように、eスポーツではデジタルの機械を使って相手と競って、賞金を稼いだり、とかくそういうイメージがあるかと思います。

それが間違いではないですけれども、今日はいろいろな側面がeスポーツの中にもあって、いろいろな業界・業種と同じようなことができるんだよ。ということも含めて、教育だったり健康だったり、医療だったり。それはプロスポーツが掲げるビジョンとすごく近い部分があります。そういったスポーツの可能性を包括的にご説明できればなという風に思っておりますのでよろしくお願いいたします。

eスポーツ参入の理由と現状

クラブの理念から先に話させていただくと、eスポーツに参入したのも、バスケットボールをやっているのも基本的には「北海道から「人」に「社会」に感動を届け、世の中を笑顔にする。というクラブ理念に基づいてのことであります。

なので、eスポーツもその手段の一つである。というふうに考えて進めております。

なぜここに理念を出したかというと、参入するにあたってのきっかけは、eスポーツに興味を持っているユーザーさんというのは、どちらかというとフィジカルなコンタクトがあるリアルスポーツとあまり接点がないという風に言われるような方なので、ユーザーの層も圧倒的に10代から20代前半ぐらいがコア層になっています。

その中で、ゲームをやっている方たち自身がなかなか社会的地位が低かったりとか、ステータスが低かったりとか、今までの日本の教育の部分にもなってくると思うんですけれども

ゲームが非常にネガティブに捉えられているというようなところから、私自身もどちらかというとリアルなスポーツをやっていた人間だったので最初はちょっとそういった偏見な目もあったんですけれども、プロのeスポーツ選手にあったり、いろいろなイベントでプレイヤーと話をしたりする中で、彼らがいかに毎日戦って、勝つためにいろいろな努力をしていて、そのために時間を割いたりとか、人生を賭けたりしている姿を目の当たりにしたときに、これはもうリアルスポーツの選手と変わらないなというぐらいの情熱だったりとか意識だったりとかを感じました。

ただ彼らが勝っても世間はあまり評価をしてくれない。という現状があって、そこに対して、我々ができることってあるんじゃないかなと。リアルなプロスポーツチームとして、eスポーツの業界に参入させていただいて、皆さんに、こういうプレーヤーもいるんだということを少しでも知っていただく機会になればと思い、スタートさせていただいています。

今我々には14名、道内道外含めてプレイヤーがいるんですけれども、立ち上げのきっかけになったのがシャドウバースというゲームなんです。

あまりイメージが湧かないと思うのですが、マインドスポーツといわれる

囲碁、将棋、チェスと同じような対面で戦って、相手の出してくるカードに対して、それよりも有利なカードを出して勝負をする。そういうゲームなんです。課金もできるような

ゲームだったので、最初はファンの方から(プロeスポーツチームの参入が)非常に叩かれたと記憶しているんですけど、やっぱりまだまだ2018年の段階ではeスポーツというのが言葉としてまだ普及していなかったので、バスケットで勝てないのに、ゲームをやっている時間はないだろうということを、バスケットボールのファンからは結構強く言われました。

けれども、先ほど言ったように、このプレイヤーたちはすごく頑張っていて、プロリーグ自体がサイバーエージェント社が始めたリーグなので、非常にレベルが高くて、日本一になった時の賞金とかも1500万円くらいいただいたというような形から、徐々に世間やメディアの注目が高まって来たという現状です。

今、チームにはこういった選手たちが所属していて、それぞれフォロワーが万単位にいたりとか、一番若い方で13歳のプレイヤーがいます。

このゲームは第五人格という、リアル鬼ごっこゲームみたいなものなんですけど、こういった中国資本の企業が開発したゲームとか海外資本のゲームだとかに参入しながら、プロリーグにどんどん参加していくというような感じなんです。

決して、そんなプロ選手だけではなくて、14名のうち、プロになっているのは4名ぐらいで、あとの選手たちのニーズというのは、「プロでそれ(eスポーツ)だけでご飯を食べたい」という方たちだけじゃなく、「働きながらeスポーツをやっていきたい」とか、「大会に出たい!」とか「海外に行きたい!」とか、いろんなニーズがあったので、決して「ゲームだけで生活ができる!」だけじゃない、プレイヤーのニーズというのもあるんだなということで、働きながらでも大会に参加できるような、遠征のサポートですとか、チームウェアのサポートですとかそういったサポートプレイヤーというのも中に入れさせていただいて、いろいろな形でスポーツを続けられる環境を作っていこう。ということでやらせていただいております。

国内外のeスポーツプロリーグの状況

これが先ほど言った初年度の大会で、それなりの場所でそれなりのお客さんを入れて、それなりの賞金を頂いて、1年に華々しくシャドウバースのプロリーグというのが誕生したんですけど、今シャドーパスというのは、2018年で世界大会の優勝賞金が1億円になり、昨年行われた世界大会が優勝賞金1億5千万円にもなっていて、これはともに優勝者の20代の選手なんです。

今はこのシャドウバースプロリーグに、我々バスケットボールリーグからはレバンガ北海道が入っていますけれども、見てわかるとおり、ソフトバンクホークスは野球。サッカーからは横浜Fマリノス。右上のG×Gというチーム、これは読売ジャイアンツです。野球やサッカーの名だたる球団が続々とeスポーツ界に参入し始めているんです。

このシャドウバースのリーグに関しては、左上からAXIZさんという日本テレビさん、その隣がAUさんで、NTTさんで、下の段にはおやつカンパニーさん。

それで我々がサッポロビールさんとタイアップして、レバンガサッポロというチームで参入しているんです。それ以外にも国内でもどんどんNPBといわれる日本プロ野球スポーツさんだったり、Jリーグさんだったりが、続々プロリーグを誕生させていたり、ようやく2019年の国体から文化プログラムとしてeスポーツが正式な種目化がされたんです。そういった形で、決して民間だけではなく公共としても、いろいろな大会を増やしていっているという形になっています。

いまやNTTさんが主催するX-MOMENT、これもNTTさんが肝入りで去年スタートしたり、さまざまな企業さんが、eスポーツ会に興味を持っていただいて、どんどんクプロリーグが増えて、プロ選手も増えていっているという状況でございます。

これは、海外のプロeスポーツチームのメインアリーナなんです。我々の様なプロのバスケットボールチームでも、なかなか自分たちのメインアリーナって、作れてないんですけど、海外に行くとeスポーツチーム専用のアリーナなんかも、どんどん出てきています。

なのでeスポーツチームがもたらす、付随的な事業とビジネスってすごく増えています。

ここに参入している選手というのが、結構な割合で韓国の選手が多くて、世界だとやっぱり

韓国選手がたくさん賞金を稼いでいるという現状です。こういったアリーナは世界的にもどんどんこれから増えてくると思います。

今見ていただいたのが、フュージョンアリーナというところで、アメリカのフィラデルフィアにがあるんですけど、アメリカだとNBLのイーグルスだったり、メジャーリーグのフィリーズだったりプロバスケットのシクサーズだったり、こういうエリアに世界の

メジャースポーツが本拠地として置かれているんです。

そこの一角に、フュージョンアリーナっていうのが作られている。これはもう街全体の都市計画だったり、再開発だったりそういったところにスポーツを取り込んでいて、フィジカルスポーツだけじゃなくeスポーツも取り込んでいるという先進的な事例かなと思っています。

ここにフュージョンという、eスポーツチームが本拠地として、試合をやったりイベントをやったりしているし、そのほかにいろいろな各地で、いろいろなアリーナができてきている

というような関係にあります。

世界的なeスポーツの市場規模

グローバルにみた時のマーケットっていうのが、今どうなっているのかというと、約20兆円規模のマーケットになっています。これはeスポーツを含めた、ゲーム業界のマーケットになるんですけれどもそのうち、スマートフォンタブレットだけでもこのぐらいになっています。

やはりゲーム業界の中でいうと、今圧倒的にスマホゲームの需要が伸びている。どうしてもコンソールと言われる家庭用ゲーム機になると、家にいないとできない。みたいなところがあって圧倒的にスマホゲームが増えてきています。

その中で世界のビデオゲームの売り上げトップ25の企業のうち、日本ってめちゃくちゃ入ってるんですよ。10社ぐらい。ソニーさんをはじめ、セガさんだったり、コナミさんだったりというのが、ビデオゲームの売り上げだとトップ25の中にすごく入っている。

なんですけど、eスポーツの規模で言ったら、全然なんですよ。

ようやく百億を達成したような市場規模なんです、なんでかというと、冒頭申し上げました通り、ゲームを開発するところには、日本の技術はすごい長けているんですけど、まあ任天堂さんとかソニーさんはじめなんですけど、プレイヤーを育てるということに、まったく日本としてはそこに価値を見出してなかった。むしろ、ゲームをやること自体が必要ではないとポジティブには受け取られなかった現状が、まだまだ蔓延っているというような現状です。なので、日本のeスポーツのマーケットは、まだまだこの程度なんです。

ただ、eスポーツをエコシステムにした時に、これだけの価値あるビジネスというのが、たくさんあり、今どんどん増えてきています。単純にさっき見たような、海外で競って、賞金稼ぎといった形だけの関わりではなくて、本当に一般のイベントをやる、イベントをオーガナイズするにあたっては、当然その他のイベントと同様に制作チームだったり照明だとか音響映像だったり、色々な方が関わってイベントが成り立つんです。

その回数がeスポーツも含めることでどんどんビジネスとしての需要も増えていく。そういったことが、ここでゲームを教えるコーチ、ゲームを配信するストリーマ、こう言ったものも5年10年前だとまったく商売にならなかった。でも今大手のアナウンサーを辞めて、独立してeスポーツ専門のアナウンサーMCになった方もいらっしゃいます。相当稼いでます。

どちらかというと、まだブルーオーシャン。そこの業界は。

で今YouTuberならぬ、ゲームの専門のプラットフォームチャンネルっていうのもいくつか出ていて、皆さんのお子様の世代になるのかもしれないですけれども、私くらいの世代のファミコンだとかプレステだとかっていう世代からすると、ゲームを攻略するときには分厚いマニュアルを買ってなんとか、それを見ながら攻略していったんですけど。今はそういうゲーム専門のプラットフォームチャンネルに飛べば、プロの専門家が事細かく映像を使って、その技術を提供してて、そこに視聴者数が増えてアフィリエイトでも収益がその配信者に上がっていくというこういうお仕事も成り立つような状況にはなってきていますので、どんどんeスポーツをハブにして、いろんなビジネスが生まれているということが言えると思います。

なのでこれは、その大会の設計に関してですけれども、これだけ大会をやるにあたっては、飲食のサービスも必要になってくるし、小売が発生したり、情報通信にだったりインフラだったりという部分が関わってきますよ、というような形でeスポーツを始める中でいろんな企業さんといろんな業種と関わりがあり、こういったことを我々もeスポーツ協会として、いろんなイベントをやらせていただくんですけれども北海道の中小企業の皆さんですとか、地場の企業の皆さんといろいろな関わりをしながらイベントを成立させていくっていう、新しいビジネスとして一つ増やすことができるんじゃないかなというふうに考えています。なので、イベント開催によってにぎわいを創出して普及、定着していく、こういったフローを作りながらeスポーツを盛り上げていきたいなというふうに思います。

ここまでが海外の事例だったり、今のeスポーツの流れであるんですけれども、一方で結構今eスポーツに関しても講演の依頼をいただく際にテーマとして言われるところが、「社会的・教育的側面」としてどうなのというところです。ここも避けて通れない話なのかなというところで、多少お話をさせていただきますけど、先ほども言ったように悪いものじゃないですということですね。

親御さんからすると、「じゃぁ、eスポーツって言えば許されるんですか」とか「eスポーツって言いながらゲームをやっているだけなんですけど」とか、いろんなお悩みをいただいたりするんですけど、基本的には野球はサッカーもバスケットも上手になるには、それなりの時間だったり没頭するような時間というのが必要になってきます。なので、バランスが必要かなと思っています。

野球もこれだけ、日本の文化的スポーツになっている中で、甲子園とかビックイベントがあって、そこで1回戦から決勝戦まで1人で投げ合います。って、そういったピッチャーを

メディアも世間も素晴らしいピッチャーとして扱うんですけれども、そこで肩を壊す可能性も出てきますし、バスケットも疲労骨折になる可能性もある。でもeスポーツだけは、目が悪くなるといって(練習や長時間することに対して)非常に批判をされてしまう。そういう現状ですよね。

すべてのスポーツに言えることなんですけど、基本的にはしっかりとしたケアとバランスと

環境を整えていけば、悪いことではないということが言えるんじゃないかなと。

現実を見ると、もうすでに中学生の将来なりたい職業って、一位がYouTuberだったりして二位に、プロeスポーツプレイヤーがあって、五位にゲーム実況者があるんです。これは先ほど申し上げたMCの方です。こういったニーズがすでにあるというのは、受け入れなきゃいけないところなんだろうな。

で、一応ですね、研究結果でも発表されている文脈でもあるんですが、ゲームって問題解決スキルを向上させている効果がある技術リテラシーが上がるみたいなところが言われています。確かに何かゲーム理論みたいな本とかも出ているぐらいなので、確かにロールプレイングであったりとか、そういう問題を解決していくとような分野でいく、結構開発者もいやらしいところがあって、絶対に気づかれないような部分とか、アイテムとかそういったところをいかに探して、問題解決していくかは自分で行動して良いPDCAを回していかないと。というところになっているそういったところの効果はあるのではないでしょうか、ということが言われています。なので、プロゲーマーを目指すだけではなくて、ゲームをすること自体からそういった自己の成長につながるということも言われています。

なので、これは割とビジネス上のPDCAみたいなところでもあるんですけど、これって実はゴールを明確にするというのは例えば、じゃあラスボスは誰なのか、現状自分のレベルってどこなんだっけ、課題がひとりじゃ勝てないから勝てる武器を作らなきゃいけないとか、仲間を増やさなきゃいけないとか、そういう課題を見つけて解決のための、策を考える。これってロールプレイングゲームそのものだなって。なので、問題発見能力とか、問題解決能力とか、問題を問題として捉える能力みたいなところが、結構ゲームで活かされるところだなというふうに思っています。教育分野においても今、ゲーミフィケーションみたいな言葉もある通り、教育分野でも非常に注目をされているということが言えると思います。

あとは、ヘルスケアという部分で言うと高齢化社会の課題解決コンテンツということで、世代間交流だったり、健康寿命だったり通いの場の創出だったり、デジタルメディスン。これは我々eスポーツ協会でも取り組んでいる、シニアの世代に関してのゲームを使った脳トレーニング。こういったところは脳トレーニングをするだけじゃなくて、お孫さんがやっているようなゲームをおじいちゃんおばあちゃんがやることでお孫さんとの対話も可能になってくる。そういった世代間交流も図れるので、高齢化にあたっても健康寿命を伸ばしていかなきゃいけないね、という医療対策の部分でも一定の効果というのが見られており、そういったところにもゲームの提案というのは、どんどん進出してきています。

教育的価値としても、海外だとすでにeスポーツやゲームで名を馳せている子なんかは、奨学金免除だとか推薦入学だとか、そういったところも増えてきています。STEAM教育との関係というところも、先ほどの説明通り、プレーヤーのそういった(問題解決能力含め)リテラシーというのは、非常に高いというところもございまして、雇用の促進みたいなところも今所属しているプロのeスポーツ選手とかも結構、地頭の良い子たちが多いんです。工学系とか、国立大とか。そういったデジタルネイティブな子たちが、今後、IT業界にセカンドキャリアとして入っていくみたいな、こういった人材派遣みたいなのも、今後増えていくと思います。なので、eスポーツプレイヤーを育てていくことは、実はこれからのDXだとか、ICTだとかそういったIT人材を生み出すという一つの手段にもなると言えるんじゃないかなと思っています。

入澤会長が冒頭会長挨拶で仰っていた、フォートナイトなんですけど、これも海外のアーティストのライブなんですね。チケット買ったら、中に入って、そのアーティストのライブに自分のアバターが、自分の好きなところで好きなメンバーと好きなアーティストのライブに参加できる。

ゲームの場所を通していろんなジャンルで踊ったり、チャットで話したりということができたり、こういうところもあれば、ROBLOXっていう、これもゲーミングプラットフォームなんですけど、これは何かというと個人法人誰でも自分でゲームを作って、そこに入り込んでやって、みんなに楽しんでもらう。今は、プログラミングとかも(学校教育などでも)やっていますけれど、プログラミング教育のほかに自分でゲームを開発するという方法を作ってそこに子供たちがどんどんそのゲームを作ってアップしていく。そうすることで遊ぶ側が作る側にもなっていくというようなのが、すごく合わさって、今は月間ユーザー1億5000万人を突破して急速に小学生に普及しています。

こういったプラットフォームがどんどん企業と連携して、つながっていくということが見えたことで、アイテムを作ったりとか、アバターの衣装を売ったりとかアイテム課金みたいな形で、立派にビジネスとして成功しているという10代の方たちも、たくさんいるような形なのでビジネスの方向っていうのが本当に幅広くなっています。なので、子供たちの可能性も含めて、こういったプラットフォームがどんどん増えていくと、そこに順応する子どもたちも増えていくというような状況です。まさにSTEAM教育の一環なのかなと思います。

eスポーツやデジタル空間の活用事例

こちらも今ちょっと画像でしか見せられないですけど、まさに今レバンガ北海道が取り組んでいるメタバース事業になるんですけど、これが今我々が本拠地にしているバーチャルスタイルを今作っています。

そこもやはり空間を共にして、今コロナで中々観戦ができない中で、バーチャルの形にを体験していただいて、いろいろな方が交流したり、選手のアバターを作ったりして、そういった双方向のコミュニケーションをオンラインでやっていくといったこともスポーツ業界の中でもどんどん進んでいます。

こちらに関しても、まだプロトタイプで実証実験レベルなんですけど、まさにIT業界で従事している皆様の知見ですとか、アイデアですとか、ご一緒できるような機会というのが、もしございましたら、ぜひITともどんどん結び付けられる、野球・サッカーと比較しても我々のようなアリーナスポーツって特にIT事業会社とのシナジーって作れるんじゃないのかなと思っています。その辺もどんどんご活用いただければなと思っております。

もうひとつ、eスポーツの特性としては、究極のバリアフリーだなというところを感じています。スペシャルオリンピックスというような障がい者のスポーツ大会があるんですけど、海外でマイクロソフトさんのXboxと、スペシャルオリンピックスが提携して障がい者と健常者がゲームで競うみたいなところを、初めて見られたんですけど国内でも、ぜひそれをやりたいなという部分も今模索しています。

やはり障がいを持っている方も、画面の向こうの健常者と対等な場で戦えるというのが

eスポーツの一つの特徴でもあります。

こういう風に腕がなくても、今だとセンシングだとかでコントロールできるようなコントローラーの他にいろいろなテクノロジーの開発が進んでます。口で動かしたり、目で動かしたり、そう言ったことで、画面の奥の相手は健常者で、そこに対等に勝負して対等に勝てる

こういった世界が、もうすでに来ていてそれは彼らからすると生きがいになっているんです。

じゃぁ、その生きがいであるゲームを否定できますか。というところなんですよ。なので

、まず我々がしなきゃいけないことは、それを受け入れる受容するということが必要なんだろうと思います。

これYouTubeで100万回再生して、バズった動画なんですけど、これは免許を返納したお爺ちゃんがここだったらいくら飛ばしてもいいよ、というお孫さんですかね。ということで往年のたしか、ドライバーだったんだと思うんですけど、93歳の方で、マニュアルで運転しているんですよね。

もう、現実世界では運転はできなくなったけど、ゲームというバーチャルの世界で、運転を楽しめる。そのことに脳トレーニングのひとつになったり、健康寿命が伸びたり、お孫さんと対決したりと、ゲームってそういう活用方法もあるので、こういったところを、YouTubeで上げて配信して、100万回再生とかされると、その配信者にもしっかりとした収益が入ってくる。なので一つの力と工夫で、こう言ったビジネスが成り立つという例ですね。

学校教育としてもアメリカだと、いろいろとインターハイみたいなことがどんどん

行われていたり、これも有名な例ですけど、平均年齢が七十一.二歳のシニアのeスポーツチームが誕生してます。他にも大阪ではこういったeスポーツの教育施設も誕生しています。大阪府の教育事業としても総合学習だったり、あるいは修学旅行団体の行き先にもなっているぐらい、こうしたeスポーツを通した教育施設というのも、これからどんどん生み出されていくのではないかなと思っています。

温泉を盛り上げようみたいなところもイベントとして、eスポーツを活用しています。

これは一見聞くとミスマッチでしかないじゃないですか、温泉×eスポーツって。ただ、これはeスポーツを観光資源として、観光地である温泉に若者を呼び込もうこういう文脈で

温泉に入りながら、eスポーツで大会やろうと。そういったこともどんどん増えています。

つまり、地方のまちおこしであったり、地方創生だったり、そういったところでも、eスポーツを活用して、若者も取り込んだりとか、そこでゲームをするだけじゃなくて、観光もしてという、こういったセットで、いろいろなことをやられています。

これも結構、対照的な例としては、ポーランドにあるカトヴィツェというところなんですけど、人口29万人なので函館ぐらいなんですかね。そこがESLという世界的なeスポーツイベントの会社さんが、インテルさんが主催する大規模なeスポーツイベントをここで毎年やっています。人口29万人の町なんですけどその1回のイベントに17万人ぐらい、世界から来られています。これがまさに町をあげたeスポーツにおける観光資源。まちおこしのすごい代表例だと思います。

こういうところですのでeスポーツって、今見たようなものとか最初にお話したような

世界で戦える選手を育てていかに、賞金を稼いでいくかみたいなところはeスポーツの可能性のほんの一つであって、もっと皆さんの生活だとか皆さんのビジネスのすぐ近くにあるもので、すぐ活用できるものかもしれないと思っています。

北海道における地方創生だとか、教育、健康、企業。そういったところに、eスポーツがしっかり結びついて、北海道をより良くしていけるかみたいなことを、北海道のeスポーツ協会として活動したり、皆様にお話をいただく機会をいただいて、少しでも多くの皆さんに

「あ、捨てたもんじゃないな」と一回ちょっと何出来るか考えてみようとか、そんな形になればすごくうれしいなと思いますしそこには全力で協会としてサポートさせていただきたいと思いますし皆様の日頃のITの技術力で、もっともっと北海道にeスポーツを盛り上げられるというふうに思っています。

微力ながら、北海道eスポーツ協会として、今年2回になるんですけど、HOKKAIDO e-SPORTS FESTIVALという形でイベントをやらせていただいております。

まさに多くの道民が参加したくなるeスポーツの祭典ということと、eスポーツの関係人口を増やしたいというのが、2年目のテーマになっています。

ぜひご覧いただければなと思います。

<詳細はこちら>

https://esports-hokkaido.com/hef2022/

本当にeスポーツの可能性という部分では、もっともっと可能性はあるかもしれないですけど今日こうやって皆様にお話をさせていただいて少しでも0じゃないな。というふうに思っていただけたら幸いです。

ご清聴ありがとうございました。

北海道ITレポート2021が発表されました!

北海道IT推進協会、2022年1月20日に北海道ITレポート2021を発表しました!

回答総数は、212事業所となり北海道内でIT産業を営んでいる事業所の内、24%の事業所から有効回答を得た形となります。

例年同様、Mikketaでもほんの少しだけ、注目ポイントをお伝えしていきます!!!

業績概況

2020年度の北海道のIT産業の売上高は、4870億となり昨年度に比べて1.2%増加しています。
また、2020年度で8年連続の4,000億円を超えてきた業績概況ですが、2021年度は調査開始依頼初となる5,000億円に達すると推計されています。

雇用人材確保の状況

従業者総数は、前年度に比べて2.2%増え、22,792人と推計されています。

参考までに道内の主要製造業の従業者数(2020 年工業統計確報(北海道分))と比較
すると、道内製造業第 1 位の食料品製造業に次ぐ位置にあり、製造業合計の 13.5%を占
める雇用吸収力を有す産業であることがわかります。

しかしながら依然として、人材の不足感は否めず、職種別従業者については「SE(システムエンジニア)」が最も多く、71.8%、次いで「プロジェクトマネージャー」(42.2%)となっています。

経営課題・成長戦略等

調査票に回答をした道内に事業所がある企業のうち、現在抱えている経営課題は「人材の確保・育成」が最も多く66.0%を占めました。この結果は、昨年度の63.9%から2.1%数値が上昇しており、人材の採用や育成に課題感を持つ事業所が増えていることがわかります。

また、道外本社事業所も同様の傾向であり、「人材の確保・育成」が最も多く72.3%を占めています。

上記の内容以外にも、作用方法で効果的だと感じた手法についてや、他社と比べて最も競争力を有する分野についての回答、新型コロナウィルス禍での対応や影響などについても詳細回答を得、レポートの中にまとめてあります。

ぜひ、ダウンロードをしてご覧いただければ・・・と思います!

ダウンロードは北海道IT推進協会のHPよりダウンロードが可能です!!

https://www.hicta.or.jp/report/