物流のDXで商品の価値をあげる挑戦

本日は、北海道物流開発株式会社様にお伺いをし、北海道の物流の現場と、DXについてお話をお伺いしてきました。

北海道物流開発さんは、3PL =サードパーティロジスティクスと言われる事業者です。
みなさんは、サードパーティロジスティクスという業態を聞いたことはありますでしょうか?企業に存在する様々な業務の中で、物流部分を担う会社をサードパーティロジスティクスと呼びます。また同社はノンアセットつまりは、資産=倉庫(商品保管目的)やシステムを保有しない業態で物流を行っている事業者さんです。

今回のお話の中で大きくあったのは2点。

1点目は、物流の現状、2点目は物流でできるDXについて、お話をしていただきました。

受付での写真

皆さんの手元に当たり前に届く、荷物。今は、通信販売などが昔に比べて増えたことにより、どのような形で運送されているのか、流れはイメージしやすいのではないでしょうか。

インターネットなどで皆さんが買われた荷物は、配送業社に渡り配送業者が購入者の元へ届けるというのが、「物の流れ」です。ですが、斉藤会長はこのように言います。「今の北海道では、地域の過疎化や少子高齢化によって、“荷物を届けに行く“までは、物が乗っていても、帰り配送センターに帰ってくる時には、荷物が何も乗っていないというのが現状。そうなると、トラックの「稼働率」が下がり、利益が上がりづらいという負のスパイラルに陥る。」

利益率が上がりづらくなっていると、配送料金も高くなり、そうなるとさらに利用しづらくなったり、そもそもの物の販売料金が高くなるなど、私たち消費者にとっても良いことがありません。

そこで、北海道物流開発さんが数年前から提言し動かしていたのが、「アソートパック」のような考え方です。

下図のような形で、冷凍ボックスや、冷蔵ボックスなどをそれぞれの荷物にあわせて配置をしたり、また荷物自体を重ねて置けるなど、トラックそのものの積載率をあげるために、混載輸送を可能にするのが、この考え方であり、方法だそうです。

トラックっていろんなものをごちゃまぜで運べると、みなさん思っていませんか?実は、色んなものを混ぜて運べることはあまりなく、一つの商材や一つのジャンルだけで運ぶという事が大半だそうです。(温度や検疫の問題等で)その為、荷物の上に荷物を重ねられなかったり、温度管理をするためだけに、トラックを別に用意したりしなければならなかったそうなんです。

その為、トラックの荷台において「縦の活用」をすることは難しかったのですが、上記の写真のような枠をトラックの荷台の中に作ると、物の積み重ねが可能となります。また、デカボという箱でも、下の写真のように、荷物を重ねることも可能になります。

斉藤会長:既存のトラックの形はそのままに、縦方向の活用をすることがこれらの物を利用することで、可能になる。ゆくゆくは、このデカボもスケールマットによって在庫管理を行いたい。

ー「何が乗っているのか、現在位置」の2点をIT化することによって、管理が容易になったり、棚卸が必要なくなったりするなど、物流の先の小売業の業務改革にも寄与できる形にすることができるそうです。

またデカボの積載等で、活躍するのが道内では北海道物流開発さんだけが代理店をされている「イノリフト」です。

イノリフトの大きさは、小中大と3種類があり、中で600kgの重さを持ち上げることができるリフトなんだそうです。また、イノリフトは非常にコンパクトな設計になっているので、物を乗せた後、そのままトラックの荷台に乗せて一緒に運ぶことも可能です。それにより、手作業による積荷・荷下ろしをなくすことで、集荷や配送の効率をあげることができると、会長は言います。

また、前述の冷蔵BOXに関しても従来の冷凍車でお店の冷凍庫に商品を置きに行くのではなく、冷凍庫そのものを配送するという形で配送ができるので、荷下ろしや、同じ時間に離れた場所での配送依頼がある際に、先方の担当者がその場にいない場合でも配送が可能になり、配送負担を軽減することが可能です。また「今後は運んで終わりではなく、レンタルにしていき、位置情報と稼働状況の見える化を行いたい」と斉藤会長は言います。

北海道の物流現場でのDXとは

では、上記のような物流現場で「DX」となったときにどういった所を変えることが出来るのでしょうか?もちろん、トラックの中を変える、トラックを買い替える等は、中小企業が多い物流現場では、あまり容易なことではありません。

斉藤会長:であれば、作業をしている作業者にカメラをつけてみるとどうでしょうか。到着したあとの一個一個の検品作業が格段に楽になると思いませんか?

現在紙で行っている伝票整理を、物流の共通プラットフォームとして、みんなで使い始めてみたらどうでしょう。そして、荷物をパレットや、小型の鍵付きコンテナで運んで、会社の前に置き配することができたらどうでしょうか?

物流業務の作業の中で、一つ一つの作業を今あるIT技術やサービスなどとつなげて考えることによって、もっと効率的にそして、積載量を増やしながら高利益で物流を回していくことが出来るのではないでしょうか。

ーと斉藤会長は言います。

斉藤会長がお話されている画像

斉藤会長はDXを進めていく上でのポイントをこのように語ります。

斉藤会長:クラウド化とプラットフォームの一元化に限る。ITは道具である以上使わなければいけないし、DX化って言っている上、使える人を増やさなければいけない。道具を使うための教育と(DXの)仕組みは、両輪で回していかなければいけない。こういうプラットフォームだったり何か、変化を起こすという打ち合わせだと”トップ”が来てしまうのだけれども、実務者がもうちょっと、自分たちの働き改革というところで、自分事と捉えなければいけない。本当の意味でのDX化というのは、道具である以上、使う人が本気になるべきだとおもうんです

物流業者は情報を受けていた側から情報を出す側に変化する必要があるんです。

ーとも仰ってました。情報を受ける、要は「運んでください」と言われたり、道路情報を受け取り、その通りに動くだけではなく、前述のように在庫情報や荷物の情報等を物流業者側が保有をし、情報を出す側に変化をする事で、生産性を向上させていくことが現状の課題です。

また、そうなったときに「商品の価値を物流が上げていくことが、(事業体としての)理想」である。と会長は仰っていました。できたての商品を提供したり、鮮度を落とさずに運んだりすることが、商品の付加価値をあげられる「物流」とするのであれば、その物流の管理や効率化に、ITの活用は必須とも言えるのかもしれません。

最後に

斉藤会長はご自身がトラック運転手だった経験、そして今でも年に数度トラックに乗る経験から、業界の現場で働く身として、このような物があったら良いのではないか。という物を次々と形にされていらっしゃいます。

よくあるDXは経営トップから「デジタルトランスフォーメーションできるように考えて!」といって、強制されるものであったり、どちらかというとあまりうまくいっていないというお話を聞くことも多くあります。

真の意味にデジタルトランスフォーメーション(デジタライゼーションではなく)をするには、現場がいかに自分事ととらえ、自分たち主体で動いていくのかという事にかかっているような気がしました。

貴重なお話をありがとうございました!!

インタビュー:入澤
写真:小関(エコモット)、新岡
文・編集:新岡

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